日本に4店、「フライターグ」が密かにキテる理由 エコブランドの開拓者で、数多くのファンも

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商品の生産量は年間約45万点。生産工程の大部分がスイス国内で行われている。5人の専門チームがヨーロッパ各地の運送業者から仕入れた幌は、チューリッヒの本社にある工場へと送り込まれる。

渋谷店に併設されたかばんの修理工房。全国から届いた「修理待ち」のバッグが多数並んでいた(編集部撮影)

金具やテープを外してカットされた幌を専用洗濯機に投入し、貯水庫に貯めた雨水を使って洗浄。洗い上がった幌をデザインのイメージに沿って複数のパーツに裁断した後、縫製のみをポルトガルやチェコなどにある工場に委託する。

大手ファッションブランドの間では、製造原価を下げるため、人件費の安い中国や東南アジアで商品を大量生産する手法が浸透してきた。それだけに、先進国の中でも特に人件費が高いとされるスイスでの生産は非効率的にも映る。

だがフライターグ氏は、「企画や販売を行う本拠地の近くで生産も行い、無駄な輸送を減らす。長い視点で考えれば、この方が環境への負荷が少なく経済的にも合理的だ」と強調する。「中国で作れば安かったのが、最近は人件費が高くなってベトナムやバングラデシュへと移り、生産地は徐々にヨーロッパに近づいてきた。輸送費も高騰する中、数十年後には生産も販売も同じ場所で行うことが一番安くなる時代が来るはずだ」(フライターグ氏)

社内には上司も部下もいない

オーナー企業であり、株式上場もしていないフライターグは、組織の構造も独特だ。社員は約220人。上司や部下といった社内階層が存在しない「ホラクラシー」と呼ばれる組織形態を採用している。

風通しをよくするためだけでなく、社員一人ひとりが自身の担当領域に責任と決定権を持つことで、意思決定にかかる時間を短縮できるという。決定事項を常に社内で共有するため情報開示を徹底し、各部署のミーティングの内容はすぐにシステム上にアップする仕組みを採っている。

創業者のフライターグ兄弟は現在、ブランドのクリエイティブディレクターとして、新規事業の開発に専念している。フライターグ氏は「資源は有限だ。経済とサステナビリティーは、切り離して考えることができない。より多くの企業がマーケティングの一環としてではなく、当たり前にエコに取り組む時代が来てほしい」と強調する。

サステナビリティーとビジネスを両立させ、ファンを獲得してきたフライターグ。企業にとっても、環境問題への意識が高まる現代において、フライターグの姿勢から学ぶことは少なくない。

真城 愛弓 東洋経済 記者

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まき あゆみ / Ayumi Maki

東京都出身。通信社を経て2016年東洋経済新報社入社。建設、不動産、アパレル・専門店などの業界取材を経験。2021年4月よりニュース記事などの編集を担当。

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