ウケ狙いの「ゆるい企業SNS」がオワコンな理由 「中の人同士」の馴れ合いにみんな飽きている

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“ゆるい企業SNS”がアメリカではすでに「オワコン」扱いされている理由とは?(写真:bigtunaonline/iStock)

その昔、まるで一大ブームが訪れたかのように、企業がTwitterアカウントを相次いで開設し、ツイートしていた時期があった。それは2009年。ブログをはじめ、まだ企業がソーシャルメディアを使うこと自体、非常に珍しかった頃だ。今やったら、むしろ別の意味で話題になりそうだが、当時は企業がTwitterアカウントを開設することそのものに対して、プレスリリースが書かれたり、それがニュースとして取り上げられていた時代だった。

企業が自ら情報を発信する手段といえば、広告を打つか、プレスリリースを書くか、もしくは自社ウェブサイト(ブログ含む)に掲載するくらいしか方法がなかった中、わずか140文字とはいえ、自分たちが発信したメッセージが、ダイレクトに消費者に届くTwitterは、当時大きく期待される存在となった。

「ゆるい企業SNS」はいつ生まれたのか?

一方で、これまで類似したものがまったく存在していなかったため、この新しいメディアを、どう使うかはすべて担当者による試行錯誤の結果に委ねられていた。どんな発言を投稿すればバズるのか(もっとも当時は「バズる」という言葉すら一般化されてはいなかったが)、その“成功法則”を、担当者は探し求めていた。

その成功法則は、“カジュアルな発言”の中に見いだされるようになった。企業やブランドの看板を感じさせない人間味あふれるコミュニケーションは「まさにソーシャルメディアならでは」と評価され、多くの企業アカウントが、カジュアルな発言やネタを投下し、ユーザーと絡むようにもなっていった。

その中でも、積極的に面白い投稿をし、頻繁にユーザーとやり取りをしながら、フォロワーの数を大きく伸ばす企業アカウントがいくつか生まれた。これが、いわゆる「軟式アカウント」と呼ばれるものである。

やがて、軟式アカウントの運営担当者は「中の人」と呼ばれるようになり、ソーシャルメディア担当者や、デジタルマーケターたちから一目置かれるような存在になっていった。彼らの一部は、時にはセミナーやイベント等で、企業アカウント運営の秘訣や、ユーザーとの向き合い方といったテーマで講演をするまでになった。

だが筆者が見た「中の人」は、壇上では、目の前にいる人とコミュニケーションを取ることが、どれだけ大事かを説いていた一方で、登壇者控室では、1人だけ誰とも会話をせず、ただひたすらスマートフォンで自社アカウントのタイムラインを追いかけていたのだが。

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