ウケ狙いの「ゆるい企業SNS」がオワコンな理由 「中の人同士」の馴れ合いにみんな飽きている
ちなみにアメリカで、企業やブランドがTwitterを使って、消費者とさまざまな形でコミュニケーションを取るようになったのは2007年頃のこと。
仮に「企業・ブランドの名を冠しつつも、さながら一個人のような佇まいで投稿を行うTwitterアカウント」を軟式アカウントとするならば、その第1号ともいえるのは、米ナショナル・フットボールリーグ(NFL)のチームである「サンディエゴ・チャージャーズ(現ロサンゼルス・チャージャーズ)」だろう。
もともと個人ユーザーのものとして運営されていた「@chargers」というアカウントが、チャージャーズに「公式アカウント」として譲渡された際、「P.F. Changs(アメリカの中華料理チェーン)に行きたい」などといった、前ユーザーの個人的なつぶやきが、そのまま「公式アカウント」に引き継がれたことで、結果的に軟式な佇まいを見せてしまったことが発端になっている。つまり意図して軟式になったわけではなかった。
ウケるために過激化する「中の人たち」
そして2009年から2012年にかけて、アメリカでも、いわゆる「中の人」たちによる試行錯誤が、数多く展開されてきた。いわゆる軟式アカウントのはしりとも言えるものも、この頃から続々と誕生している。
試行錯誤の中、政治的な話題に対して、個人の意見をつぶやいて炎上するようなケースも見られたが、一方で、ネガティブに絡んでくるユーザー相手に、若干皮肉めいたコメントで返すような、日本の軟式アカウントでも少なからず見られるようなやり方(英語では“clapback”と呼ばれている。いわゆる“ディスり返す”という意味だ)も、この頃生まれている。
その後、2013年頃から米デニーズの企業アカウントを先駆けとして、企業アカウントは、少しでもインパクトのあるネタを投下する方向に進み始める。そして企業アカウントは、よりウケを狙うために、その投稿や行動をますます過激なものにしていった。いわゆる「中の人」たちは、こぞって「ミーム(”meme” = インターネット上で、模倣や派生を繰り返しながら急速に広がるネタのようなもの)」を少しでも多く生み出すことを考え、ミームを生み出すことが“業務”になっていった。
多くのユーザーを巻き込むようなミームが作り出せなければ、競合のアカウントに皮肉めいた発言をしてみたり、他の企業アカウントとネタトークを繰り広げたり(こういったやり取りは、「日本の軟式アカウント」と非常によく似ている)、場合によっては、フォロワーの多い著名人らに絡むといったことを繰り返しながら、少しでも目立とうと躍起になっている。「中の人」は、とにかくTwitter上で目立つことが業務であり、どれだけ目立つかで評価されていった。
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