大塚明夫「プロ声優と素人を分かつ決定的な差」

「いい声」に囚われる限り人の心は動かせない

剣士の対峙のように、細く細く“相手”の中心をとる。ぎりぎりまで狙いを絞り、相手に届く一撃をスパンと放ることが大切です。役者同士がそういうやり取りをできなければ、見ている人にも刺さりません。狙いを定めずなんとなくわっと声を出したり、自分で自分の声を聞きながらウットリしているようでは駄目なのです。

芝居として、計算で「いい声」を使うこともあります。ここはキメるとこだな、というシーンでは、ちょっと低めの、響く音をわざと使ったりもする。でもそれも、お客さんや一緒に芝居をしている声優に向けてではなく、あくまで“対峙している役”に向けて放つ声です。

スネークとして、ライダーとしてその声を使う、というだけ。そこにうそを交ぜる余地はありません。「大塚明夫としていい声だと思われたい」なんて意識を、スネークが持っているわけがありませんよね。

「いい声を聞かせる芝居」は駄目

確かに、ずっと前線にいる人は「得意技」を持っていることが多いです。この役はこいつだよね、というものを持っていると強い。私の場合は、なんだかワケありげで強い男、あるいは「漢と書いてオトコと読む!」みたいなキャラでご指名を受けることが今のところ多いです。本人はそうマッチョでもないので、そればかり続くと息切れするのですが。

でも、これは若いうちに「声を作っていく」ことで出来上がる武器ではありません。人間としての、もっと“核”の部分に関わる問題です。何らかの役を真摯に作ろうとしたときに、その役者の核の部分にはまることがあるのです。その合致と、単純な声質などの条件が合わさったときに、「こういう役はこの人しかいない」という印象を与えることになる。

私の中にどれだけ美少年的なよさがあったとしても、この声で美少年役をやったらなかなか納得していただけないでしょう。

つまり、芝居をした結果「声がいい」と言われるのはいいけれども、「いい声を聞かそう」と思って芝居したら駄目だよ、ということです。単純な話ではありませんか?

付け加えるなら、「いい声」というのは、確かに「いい刀」なのだろうとも思います。人によって声質というものはあり、聞いていてなんとなく心地よい声、耳にひっかかる声というのはある。それは確かに1つの武器です。よく切れる刀である、とも言えるでしょう。

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