ブームでも「クラフトビール」を店が売らない訳 やむにやまれない事情が小売り側にもある
商品点数をぐっと絞ればいいのですが、前回(日本の「クラフトビール」実態がわからない事情)指摘したとおり、マーケットの定量的なデータがないので売れ線が何なのかなかなか判断しづらい。絞るにしても増やすにしてもその根拠に乏しく、勘で行うしかありません。いわゆる「出たとこ勝負」という形になってしまいます。
とはいえ、たくさんの種類が並んでいる中から選ぶのがクラフトビールの楽しさの1つでもあって、1種類しかないのであれば魅力も半減してしまいます。多品種そろっていないと面白くないけれども、ロスしやすくて業務コストが増える性質のものですから小売店が積極的にはなりにくいのだと思われます。
手間がかかるのに儲かりにくい
4つ目は、学習コストが高い割に儲けが少ないことがあります。クラフトビールは多様性が魅力だとよく聞きますし、実際さまざまなスタイルのものがあります。今現在クラフトビールが何銘柄日本で流通しているかも、もはや把握できません。毎日どんどんリリースされていくので情報がまったく追いつかないほどです。
最新トレンドを勉強しながらビールの発売情報を追いかけているだけでも相当ハードな作業です。そういう決して小さくない負担があるにもかかわらず、ビールは比較的安いお酒なので粗利額が低いのです。同じものをケース単位で購入する消費者は少なく、バラ販売が多いので苦労の割にそれほど儲からないのも厳しいところ。
小売店からすると同じ利益率なら単価の高いほうが嬉しいわけで、学習コストに対するリターンが少なすぎる状況が導入を妨げている点であろうと考えます。世界的に見ても現在クラフトビールには高い専門性が求められますが、清酒やワインほど儲からないので小売店側のモチベーションが上がらないのかもしれません。
最後に、欠品するのが当たり前なことが挙げられます。醸造規模が小さいために醸造所側で同一商品を常時潤沢に在庫できません。試しに販売してみて反応がよかったので小売店が再注文しようと思っても、醸造所側で欠品していることが往々にしてあります。せっかく売れ筋を見つけたと思っても商品がないのですからどうしようもありません。
バラエティーの豊かさを志向する醸造所も多いので1回限りの限定品が現在非常に多く、通年手に入る定番品はそれほど多くありません。
飲み手側もつねに新しいものを求める傾向があるので、それに応えるためにも必要な措置ではあるのですが、小売店側から考えると毎回新商品をアピールして販売していくのは販促コストが高くつきます。ただでさえ取り扱いの面倒なうえ、新商品を売るのにさらに手間がかかるとなれば、積極的に扱おうとは思えないでしょう。
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