再エネ事業者が猛反発、「新料金制度」の是非 経産省提案で「負担増6000億円」の試算も

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日置氏はさらに、「現在、送配電設備の維持・運用コストの約8割を設備関連など固定費が占めているのに対して、それを賄う託送料金のうち定額で徴収できる基本料金による回収は約3割にとどまる。電力需要が伸び悩む中では、今までのような電力量に依存した費用回収のやり方では難しくなってくる」と説明する。

経産省では発電側基本料金制度導入とパッケージの形で、送配電ネットワークに接続するための工事費(初期費用)の負担額について、相対的に重くなりがちだった再エネ電源への負担を軽減する施策を打ち出している。

ユーザーが関心を持ちにくい、複雑な制度

それは、「一般負担上限額の見直し」と呼ばれる措置だ。この措置により、東北地方の基幹送電線増強工事では、風力発電などの再エネ事業者の負担が数百億円規模で軽くなっていると経産省は説明する。

一方、三宅氏は「一般負担上限額の見直しにより、すべての再エネ電源がメリットを受けられるとは限らない。接続工事のコストが大きくないケースが多い太陽光発電にとって、メリットはあまりない」と指摘する。

発電側基本料金制度は仕組みが複雑で、ユーザーが負担する託送料金総額は変わらない。そのため、一般ユーザーは関心を持ちにくい。とはいえ、再エネの導入拡大など今後の電力設備のあり方に大きな影響を及ぼすと見られるだけに、注視を怠れない。

送配電ネットワークの維持・運用の安定化と、再エネ電力の拡大はいずれも政策の大きな柱だ。両者の整合性を考えたときに、現在の案が最もふさわしいと言えるのか。経産省にはわかりやすい説明が求められている。

岡田 広行 東洋経済 解説部コラムニスト

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おかだ ひろゆき / Hiroyuki Okada

1966年10月生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。1990年、東洋経済新報社入社。産業部、『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部、企業情報部などを経て、現在、解説部コラムニスト。電力・ガス業界を担当し、エネルギー・環境問題について執筆するほか、2011年3月の東日本大震災発生以来、被災地の取材も続けている。著書に『被災弱者』(岩波新書)

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