再エネ事業者が猛反発、「新料金制度」の是非 経産省提案で「負担増6000億円」の試算も

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再エネ事業関係者による国会議員へのロビー活動も活発になっている。アメリカやヨーロッパなどの商工業団体は連名で「現在示されている制度案は、再エネ電力の固定価格買取制度(FIT)の法的趣旨に反し、再エネ発電事業者や再エネへの投資家から利益を奪い取るものだ」として、制度案の見直しを求める意見書を提出している。

在日米国商工会議所は東洋経済の取材に対し、「現在検討されている制度案は、投資家保護や法律の適正な執行の面で問題がある。FIT制度の法的安定性や予見可能性に対する投資家の信頼を著しく損なう」と回答。再エネ発電事業の法務に詳しいベーカー&マッケンジー法律事務所の江口直明弁護士は、「不利益を被る事業者から今後、日本政府が損害賠償を請求される可能性もある」と警鐘を鳴らしている。

経産省は2023年度導入を目指す

FIT制度を導入した後、財政負担が急増したスペインは、発電事業者に保証していたFIT価格を事後的に引き下げた。「このことをきっかけに、スペイン政府は32件の仲裁を申し立てられ、うち5件で敗訴。総額740億円もの損害賠償を負っている。日本でも同じようなことが起きかねない」と江口氏は指摘する。

経産省が発電側基本料金制度の導入案を検討するワーキンググループ会合を設けたのは2016年9月。エネルギー基本計画に盛り込まれて閣議決定を経た後、2019年9月の審議会で「2023年度に導入を目指す」方針が了承された。

経産省によれば、人口の減少や省エネルギーの進展などで電力需要が伸び悩む一方、再エネの導入拡大に伴って送配電線へ接続するニーズが増えている。また、高度経済成長期に建設された送配電網の更新費用が今後増大することが予想され、財源の確保が急務になっている。

そのうえで経産省は、①公平・適切な費用負担の実現、②送配電設備の利用者である発電側・需要家側双方に対して、合理的なインセンティブが働く制度設計が必要だとしている。

しかし、制度設計はかなり複雑で専門的だ。

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