自転車操業がベンチャーにとって悪くない理由 「激戦」に生き残る関西の有力3社に学ぶ
真山:体験農園で農業について学び、野菜を作れるようになっても、実際に販売して利益を得られるようになるためにはハードルもあるのではないですか?
西辻:卒業後は、われわれがしっかりサポートし、一緒に考えることをしています。販路を確保するシステムを作り、卒業生の野菜が売れるように独自の販売ルートを確保して流通に乗せ、サポートしています。生産者が消費者に直接販売できる小売アプリを開発し、生産者が安定した収入を持続できるような仕組みを構築しています。
真山:農園コンサルスクールを運営されているわけですが、在庫を持ったり、モノを売り買いするリスクを取らない、「手数料ビジネス」とも言えます。さらに小売販売を始められましたが、順調に利益は出ていますか?
西辻:それが弊社の最大の弱点です。流通販売が利益を取りにくいのです。
真山:どれくらいの利益を上げることを目標にされていますか?
西辻:目標値としては利益率で10%と思っていますが、実際はマイナスの数字になっています。流通販売というレッドオーシャンに飛び込んで、ここからどう利益を出していくかという構図を考えるのが現在の弊社のフェーズです。
真山:新業態としてあいさつは済んだので、これからはほかの小売販売と違う点をアピールして、勝負に行く段階に来たということですね。何年ぐらい我慢しますか?
西辻:5年で黒字転換したいですね。
真山:とてもいいビジネスモデルだと思います。うまくいけば一気通貫です。関心のある農業未経験者に試してみる場を提供し、やり方を教える。もっと深く農業を学びたい人が入学できる学校を用意したことで、新しい顧客も呼び込めます。生産物の販売方法が分からなければ、売れるようにサポートする。川上から川下まで全部を扱っている強味を、これから生かされるのではないでしょうか。
空き駐車場のマッチング
渡邊:続いては、akippa(本社・大阪市浪速区)の金谷元気社長です。
もともとは通信機器などの商品を売る販売会社でしたが、ある社員の発案で、使われていない駐車場をほかの人へ貸し出すサービスを生み出しました。
駐車場の持ち主と、駐車場が空いている時間に利用させてもらう契約を結び、その情報をネットに掲載。必要な人が予約できる仕組みです。駐車場の持ち主は契約の初期費用がかからないうえ、借りる利用者は、空き駐車場を現地で探す手間がなく利用料金も安いため、双方から支持を得ました。そして、4年前は3000件だった駐車場拠点数が、現在は3万件を超え業界最大手に成長しました。