自転車操業がベンチャーにとって悪くない理由 「激戦」に生き残る関西の有力3社に学ぶ
渡邊:もともとの祖業とは全然違う事業のアイデアが次々と浮かぶんですね。
西出:日常生活で、「面倒くさいな」「億劫だな」と感じるときに考える癖をつけて、「面倒くさい課題」を解決できたら、新しいアイデアになります。人とは違う、ちょっと変わったことを考えることが好きですね。お客さまに刺さるアイデアや商品は、実際に私自身や周りの人が困っていることから思いつくことが多いと考えています。
この肌着のビジネスを立ち上げるに当たっては、かつて盛んだった地元の繊維産業を再び盛り上げたいという思いもありました。
真山:食品と衣料では製造設備がまったく異なりますから、ゼロからのスタートだったはず。開発資金をどのように融通されたのでしょうか?
西出:弊社は今まで、国や大阪府、泉佐野市などから11件の補助金をいただいております。起業家の新しいアイデアを支援するための制度なのですが、そこで思いついたことと、求められていることがマッチしていたので挑戦しました。泉佐野市の場合は繊維産業の活性化につながるアイデアを求めていました。
真山:地域の活性化につながることに目を向けられたことが、事業の拡大を可能にしたのですね。
体験農園を貸し出すビジネス
渡邊:続いてはマイファーム(本社・京都市下京区)の西辻一真社長です。農家から耕作放棄地を借り、体験農園として貸し出すビジネスを2007年に起業。利用者には、農具や肥料を無料で使えるようにして、作り方を教えてくれるアドバイザーも配置。初心者でも気軽に始められるとあって人気が広まりました。
農園数は現在、90カ所以上と当初の2倍以上になり、売り上げは7倍、利用者数も500組増えました。
売り上げが伸びたのは利用者が増えたからですか?
西辻 一真(以下、西辻):いま農業をやりたい人が増えてきているという影響があります。“アクティブシニア”と呼ばれる年配層と、お子様が小さいファミリーで来られる人に大きく分かれています。
真山:以前は農地を貸し出すことに抵抗のある農家がほとんどでした。賃貸に同意される方が、増えてきたのですね。
西辻:かつて貸したくなかった人が高齢化して、そこから相続を受けた人たちがもう農業をやっていないことから、貸してくださる人が増えています。