医学部が日本の大学界に圧倒的な力を持つ理由 歴史を学べばその本質がおのずと見えてくる

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この状況は、今でも変わりません。現在も、医学部は強い影響力を持ちます。それは、医学部が大学設立時に中心的な役割を担ったことに加え、附属病院からの現金収入があること、および国から支給される運営費交付金が大きいためです。

たとえば、わが国には東京医科歯科大学、浜松医科大学、滋賀医科大学、旭川医科大学の4つの国立の医科大学がありますが、このような大学が2018年度に受け取った運営交付金は、それぞれ135億円、58億円、57億円、51億円です。

戦後に設立された67大学のうち、東京医科歯科大学が受け取った運営費交付金は、鹿児島大学、信州大学に次いで第3位です。多くの総合大学を凌ぎます。

また、単科大学である浜松医科大学、滋賀医科大学、旭川医科大学が受け取った運営費交付金は、医学部がない総合大学である埼玉大学(61億円)、宇都宮大学(56億円)と同レベルです。

医学部の有無は予算規模に影響

医学部の有無は国立大学の予算規模に影響します。2018年度の運営費交付金交付額のランキングで、医学部のない大学は10位の東京工業大学の後は40位の静岡大学までありません。医学部を持つ総合大学で、静岡大学より下位にランキングするのは、41位の大分大学だけです。

医学部を設立するには、多くの専門家を集め、巨額の資金が必要になります。近年、宮城県仙台市の東北医科薬科大学と千葉県成田市の国際医療福祉大学に医学部が新設されましたが、21世紀になっても、医学部を新設するのは大変です。現在と比べてはるかに貧しかった明治から戦前に医学部を立ち上げた先人たちの苦労は察して余りあります。

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戦前、20の官立大学のうち、13の大学に医学部がありました。旧七帝大と旧六官立医科大学です。後者は、現在の千葉大学、新潟大学、金沢大学、岡山大学、長崎大学、熊本大学の前身です。

このような大学では、今でも医学部が強い影響力を持ちます。2018年度、旧七帝大のうち3つの大学で医学部出身者が学長、あるいは総長を務めていますし旧六官立医科大学を前身に持つ大学でも、5つの大学で学長は医学部出身です。

医学部が力をもつのは旧七帝大や旧六官立医科大学に限った話ではありません。わが国には戦後に設立された25の国立総合大学があります。2018年度、このうち16の大学で医学部出身者が学長を務めていました。多くの総合大学で医学部が権力を握っていることがわかります。

上 昌広 医療ガバナンス研究所理事長

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かみ まさひろ / Masahiro Kami

1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。

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