日経平均株価、188円安に 地政学的リスクに、再び冷え込む東京市場

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3月3日、緊迫化するウクライナ情勢など地政学的リスクを警戒し、東京市場では株安・円高が進んでいる。写真は都内証券会社の株価ボード。1月撮影(2014年 ロイター/Issei Kato)

[東京 3日 ロイター] -緊迫化するウクライナ情勢など地政学的リスクを警戒し、株安・円高が進んでいる。ろうばい売りが大量に出ているわけではないが、東西対立への懸念からグローバル投資家が資金を巻き戻しているという。

資産価格下落などを通じて米経済が悪化すれば、米緩和縮小ペースが落ちてさらに円高圧力がかかることになり、日本株には不利な状況となる。ウクライナ問題は一時的な影響にとどまるとの見方も多いが、情勢は流動的で予断を許さない。

慎重ムードに包まれる

週明けの東京市場では株安・円高・債券高が進行。日経平均<.N225>は大幅続落となり、下げ幅は一時400円安に迫った。ドル/円も1カ月ぶりに101円前半まで下落。10年円債金利は10カ月ぶり低水準の0.570%まで低下し、マーケットはすっかり慎重ムードに包まれている。

東証1部売買代金(株式)は2兆0054億円と薄商いで、日経平均も1万4500円の節目を割り込んだ後は下げ渋った。だが、買い戻しの勢いは鈍く、リバウンドの力は弱い。「ろうばい売りがそれほど出ているわけではないが、グローバル投資家がリスクオン・ポジションを巻き戻している」(大手証券トレーダー)という。

ウクライナの国内総生産(GDP)は1652億ドル(2011年、世銀)と日本の福岡県並み。日本からの輸出は1000億円程度、輸入は150億円程度と小さく、日本経済への直接的な影響は大きいわけではない。しかし、海外勢が取引の過半を占める日本株市場では、グローバル投資家のポジション拡大・縮小が大きな影響をもたらす。

BNPパリバ証券・日本株チーフストラテジストの丸山俊氏は「日経平均が大幅に下落したのは、リスクに敏感なグローバルな投資家がいったんポジションを外す動きを強めたためだ」と指摘。「ファンダメンタルズからみれば日本株は下げ過ぎの水準だが、ウクライナ情勢などの外的環境が深刻化すれば一段安となる可能性は高い」との見方を示す。

米経済に影響及ぶかが焦点

日本経済に対して直接的な影響は小さいとしても、株安などを通じたマイナス圧力には警戒する必要がある。中国の理財商品への懸念や新興国問題などが浮上するなか、投資家のリスクマインドを支えているのは、寒波の影響が一巡すれば米経済が成長スピードを取り戻し、世界経済をけん引してくれるという米経済への自信だ。

しかし「地政学的リスクによって米経済が減速するようなことがあれば、投資家は拠り所を失ってしまう」(第一生命経済研究所・首席エコノミストの熊野英生氏)。さらに米経済が減速して、FRB(米連邦準備理事会)によるテーパリング(緩和縮小)のペースダウン観測が強まったとしても日本にとっては円高要因になるため、もろ手をあげて歓迎はできない。

ドル/円に関しては、日本の貿易赤字や日銀の追加緩和期待もあって、過去の地政学的リスク増大時よりも円高の進み具合は遅い。しかし、地政学的リスクが高いままでは、今週発表予定の2月米ISM製造業指数や2月米雇用統計など重要指標の結果が良くても、投資家のリスク選好度は回復せず、円安基調には戻りにくいかもしれない。

現在は巻き戻しの範囲内

一方、ウクライナ情勢については、落としどころは見えているとの指摘もある。「中間選挙を控える米国がこぶしを強く振り上げてしまったために、もめごとが大きくなってしまったが、セバストポリ軍港を含むクリミア地方をロシアに割譲すれば、問題は収束する。軍事衝突は米国、ロシアともにメリットがない。最悪な状態には至らないだろう」(国内銀行トレーダー)とみられている。

ロシアの軍事介入方針が伝わる前の数値だが、「恐怖指数」とも呼ばれるシカゴ・オプション取引所(CBOE)ボラティリティー・インデックス(VIX指数)<.VIX>は前週末28日の時点で、14ポイント台と最近のレンジ内にとどまっている。投資家はリスクオン・ポジションを巻き戻してはいるが、リスクオフのポジションを構築するまでには至っていないようだ。

FPG証券・代表取締役の深谷幸司氏は「ウクライナ問題が、リーマン・ショックのようにグローバル経済やグローバル金融に多大な影響を及ぼすイベントになるがい然性は低く、あくまで局所的な問題にとどまるとみている。欧米とロシアの対立の構図を深刻化させる事態にもつながらないと考えられる」との見方を示している。

ただ、ウクライナ情勢は流動的で、突発的な事態には警戒が必要だ。また新興国問題など世界が協調して対応に当たらなければならない問題を抱える現在、国家間の摩擦がこれ以上大きくなれば、今度こそ、リスクオフの動きが強まる可能性がある。(伊賀大記 編集:山川薫)

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