スノーデンが暴露した「大量監視システム」の罠 プライバシーは家財と同じく自分で守るもの
スノーデンは、プライバシーと自由をきわめて重要なものと考え、それを損なう監視の実態を明らかにすべく、大きなコストを払った。そしてそれは状況をある程度は変えた。
だったら──「監視社会けしからん、NSAとファイブアイズゆるせん!」と考えるのであれば、隗より始めよ。あなたも、スマホの設定を変える程度の行動をしてはいかが? むずかしいから、面倒だから──そんな逃げ口上で何もしない、個人情報ダダ漏れの人のプライバシー論に何の説得力がありましょうか。もちろん、本書の読者がこれに同意する必要はない。でも、少なくとも何か自分なりの対応を行う契機にはなるはずだ。
本書の翻訳は、当初何やらずいぶん秘密めかしたメールで河出書房新社の吉住唯氏より相談がきて、中身もよくわからないまま承知させられ、原稿の束が何といまどき紙で送られてくるところから始まった。その後も連絡はセキュリティー重視のSignalだけ、メール等の言及禁止といった細かい指示がきて当初は閉口したし、もったいつけすぎだろうと鼻白む思いもさせられた。
出版の内容が事前に漏れていたら?
ところが原著刊行の翌日、アメリカ政府は版元を訴えた。内容を事前検閲させなかったから、とのこと。本書の存在、内容が事前に漏れていたら、出版前に何らかの強硬手段がとられていた可能性も十分ある。著者の警戒は決して杞憂などではなく、己の不明を恥じる次第だ。
ちなみにスノーデンの記述を信じるのであれば、本書(やこのコラム)を読んでいるというだけで、みなさんはすでにNSAに目をつけられ、一挙一動、一言一句がすべて見張られていることになる。どうです、おっかないでしょう。ましてそれを訳したこのぼくは、なにやら壮絶な要注意人物になりそうだ。
だからこそ(というのは言いすぎだが)本稿で触れたセキュリティーの設定くらいは、面倒くさがらずに見直してみよう。本書サポートページにはその他いくつか各種セキュリティー関連の情報へのリンクも入れるようにしてある。そのうえで本書をお読みいただき、そもそものセキュリティー(これはコンピュータのセキュリティーの話でもあり、国の安全保障という意味でのセキュリティーでもある)について、さらには内部告発者の倫理についても、みなさんなりに考えていただければ幸いだ。
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