スノーデンが暴露した「大量監視システム」の罠 プライバシーは家財と同じく自分で守るもの

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スノーデンはその現場にいて、そして自らもその同じ考え方にとらわれてキャリア形成を行う。アメリカを守る、とは本来はどういうことなのか? アメリカを守るためにアメリカ憲法すら踏みにじる──それは本当に正当化されるのか? 建国の理念を失ったアメリカは、本当に「アメリカ」なのか? 多くの人は悪いルールでも絶対に順守すべきなのだからスノーデンのやったことはいけない、とかいうことを平気で言う。

でも本当にそうなのか? 国に、組織に忠実であるというのはどういうことなのか? スノーデンが直面した選択は、ぼくたち自身もさまざまな場面で突きつけられる選択でもあるのだ。

本書に描かれたスノーデンの経歴は実に面白い、またそこで描かれる「外交」の姿を借りた諜報活動の実態も、実に楽しい。もちろん、そのすべてが裏付け可能なわけではない。

例えば彼がNSAやCIAのリアルタイム完全バックアップシステムの基盤を本当に構築したか、確かめるすべはない。だからといって、彼の主張すべてを疑う必要などはない。一般に思われているよりずっと徹底した監視が行われていた、という彼の暴露はまちがいないものだ。

ではそれに対して具体的にどう対抗すべきか? スノーデンのおかげで、事態は少し改善した。NSAは、少なくともアメリカ国民に対する完全監視はやめたらしい。そうした監視を支持する各種規定も廃止されたようだ。また各種企業も、セキュリティーを高める方策をある程度は講じるようになった。でも、当然ながらそれで十分とはとても言えない。

しかも面倒なのは、いまや国が見てるぞ、というレベルの話ではない、ということだ。いまや各種大規模ネット企業がさまざまな形で人々のデータを集めている。そしてプライバシーを懸念し、各種の監視に抗議する人々でも、一方ではSNSなどで自分の居場所を宣伝し、あらゆるファイルを自ら進んでクラウドに上げてしまう。

そして、そうしたクラウド企業やネット企業は、そのデータを束ねて政府にホイホイと渡し、ほかの企業にそれを売り飛ばす。

プライバシー重視を行動で示そう

では、それに対してどうすればいいのか? 具体的な対応とは何だろうか。

それはまず、自分がプライバシーを重視していることを行動で示すことだ。いまの監視やプライバシーの戦場は、相当部分がネット上に移行している。では、対抗手段の現場も当然ながらネット上になる。自分のネットへのインターフェースについて設定やソフトを見直すことこそが、プライバシー重視の第一の行動となる。

そうした行動は、そんな大げさなものである必要はない。まず1つは、自分のSNSやスマホのプライバシー設定を見直して、余計なデータを勝手に集めたり流したりさせないようにすることだ。そうした設定については、ネット上にも多くの情報がある。

「フェイスブック プライバシー」で検索すれば、すぐにやり方はわかる。自分の居場所情報を勝手に集めるな、広告の選択に個人情報を使うな──そうした設定を変える人が増えるだけでも、多少はちがってくる。

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