「チャンギ空港」で27時間遊び尽くしてみた 「世界一の空港」の実力を思い知った

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複合施設ジュエル内にある巨大植物園「資生堂フォレストバレー」(写真:Lauryn Ishak/The New York Times)

「トレイル」と書かれた標識がいざなうのは、ジュエルの平らで清潔なフロアを歩く「ハイキング」だ。滝の周りの木々や低木のエリアは、日本の化粧品メーカーの社名から「資生堂フォレストバレー」と名付けられている。滝の正式名称は「HSBCレイン・ボルテックス」だ。

滝はショップやレストランに囲まれており、ジャングルの景色とカルバン・クラインの最新ファッション(もしくはシェイクシャックの行列)が同時に目に入ってくる。人工的なものと自然が融合し、滝はライトによって深紅色に変化し、星空の下で食事をしているような空間もつくられている。

その空の下、木が立ち並ぶジュエルの最上階にあるのは「キャノピーパーク」だ。テーマパークのようなアトラクションが楽しめ(大人料金は5シンガポールドル[約400円]〜)、迷路や滑り台の他、飛び跳ねる「バウンシング」と歩ける「ウォーキング」の2種類がある「マニュライフ・スカイネット」がある。

まるでアスレチックのような「スカイネットウォーキング」(写真:Lauryn Ishak/The New York Times)

スカイネットの「ウォーキング」を選ぶと、夫が「下を見ちゃだめだよ」と言った。

でも私は見た。真下に人々の頭があり、ネットをすり抜けて無印良品店のアクリルボックスのディスプレイの中に落ちる自分を想像してしまった。

受賞歴のあるレストランや、シンガポールをはじめとしたアジア各地の料理の中から、クルーズ船のバイキングのようなランチをジュエルで食べた。シンガポール在住の友人も加わり、香港発のミシュランレストラン「ティム・ホー・ワン」で点心を楽しんだ(料金は驚くほど手頃だ)。

そして、ラーメン店で初めてミシュランの星を獲得した日本の「蔦」で醤油ラーメンを食べた後は、日本の「あいすの家」の生乳ソフトクリーム、「バーズ・オブ・パラダイス」の「ボタニカルジェラート」を堪能した。

夢のような世界が一瞬で冷めた瞬間

午後にストリートマーケットのような雰囲気で地元のお菓子を食べ歩くと、すぐに夕方になった。天井からミストが降り注ぐ中、毎晩無料で鑑賞できるレイン・ボルテックスの光と音のショーが始まった。

店から抜け出してバルコニーから身を乗り出し、スマートフォンを構える人々に交じって、熱狂的なサウンドと共に目まぐるしく色が変わり、プロジェクションが映し出される滝のショーを鑑賞した。

おそらくショーよりも印象的なのは、この巨大な滝をキッチン家電か何かのようにコントロールできることだ。時間が経つにつれ、心の奥で何かがひっかかった。ジュエルの風景に圧倒されて、マヒしていた動物的な本能が目を覚まし、気分が落ち着かなくなった。目の前に植物や木々があっても、自分と空との間に天井があると知っているからだ。

夜が更け、その夜の2回目の音と光のショーが始まった。スワロフスキーのクリスタル製の雲の下にいた私たちは疲れ果て、映画はやめてホテルに戻り、チャンギ空港の管制塔のふもとでぐっすり眠った。

飛行機が頭上を飛ぶ音がかすかに聞こえた。

(執筆:Stephanie Rosenbloom、翻訳:中丸碧)
(C) 2019 The New York Times News Services

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