みんな大好きな「アボカド」品薄回避の最終手段 遺伝子組み換えへの取り組みが始まった

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しかし、気候変動が激しさを増し、アボカド業界が直面している問題は緊急性が高まっている。カリフォルニア州では昨年、熱波で今夏のアボカドの生育に被害が生じ、卸売業者は輸入品に頼らざるをえなくなった。同州の業者ミッション・プロデュースのジム・ドノバン代表によると、35ドルだった48個入りのケースの卸売価格が、70〜80ドルと倍以上になった。

「この業界における持続的な物価水準としては、おそらくこれまでで最も高かった」と、ドノバンは言う。

科学者や業界の専門家は、今後数年間で熱波の発生頻度が増し、アボカド不足は深刻化すると予測している。カリフォルニア州の科学者らによる最近の研究は、気候変動により今後30年間で州内のアボカド生産が40%減少する恐れがあると推計している。

遺伝子改変がもたらす影響

「水がほとんどない非常に暑い場所で生育するアボカドや、雨の多い場所で生育度が増すアボカドがある」と、エレーラ・エストレラは言う。「熱と干ばつへの耐性を与える遺伝子を特定できれば、未来のためにアボカドを設計することができる」

しかし、遺伝子研究は物議を醸しやすい。科学者の90%は遺伝子組み換え作物(GMO)は食べても安全だと考えているが、多くの環境擁護団体が遺伝子改変に反対している。遺伝子改変は農薬の使用量を増加させ、栄養素の含有量にも望ましくない変化をもたらしていると反対派は主張する。

エレーラ・エストレラとメキシコの共同研究チームも、バイオテクノロジーをめぐる複雑な政治問題を乗り切らなければならなかった。彼らのアボカド研究は2012年にメキシコの農業省から250万ドルの助成金を得て開始。ところが3年後、遺伝子研究とバイオテクノロジーに否定的になった政府が助成金の更新を認めず、チームはほかから研究資金を工面せざるをえなくなった。

科学的な障害にも直面した。トウモロコシなどと違い、アボカドは構造が複雑で、ラボでの生育が困難だ。さまざまな品種のサンプルを収集するために、チームはメキシコの辺境を訪れ、麻薬カルテルが地元経済を支配する地域にも足を運んだ。

そうしたサンプルの遺伝物質を分析するのは、シュレッダーにかけられた文書をつなぎ合わせるようなものだったと、エレーラ・エストレラは説明する。

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