テレビ朝日とKDDI、動画配信で手を組んだ事情 動画配信「戦国時代」をどのように生き抜くか

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今後は、地上波テレビで見逃し配信や連動企画など配信サービスを宣伝することもでき、さらなる知名度アップも見込まれる。KDDI側にとっても大きなメリットが生まれそうだ。

一方、テレビ朝日の課題もある。現在、テレビ朝日はサイバーエージェントと共にAbemaTVを運営している。AbemaTVはサイバーエージェントの連結子会社で、テレビ朝日の出資比率は36.8%だ。

AbemaTVは、地上波と同じように決まった時間に番組を放送する「リニア放送」だけではなく、「Abemaプレミアム」と称するSVODサービス(月額960円)も展開している。同サービスは2017年12月の開始から2年間で51万人もの会員を集めている。

AbemaTVといかに棲み分けるか

さらに、AbemaTVの番組の多くをテレビ朝日のスタッフが制作している。仮にビデオパス向けのオリジナル作品を制作することになれば、そちらにリソースが割かれ、AbemaTVの制作力が落ちる可能性もある。

こうした点について、「AbemaTVはリニア放送がメイン。また、視聴者の多くは若者でビデオパスとは異なる。ビデオパスは携帯向けの会員が多く、年齢層が高い」(テレビ朝日の前出の担当者)と語り、属性の違いから食い合いにはならないと考えているようだ。

一方で、テレビ朝日の別の経営企画部門担当者は「(AbemaTVとビデオパスは)多少重なり合うところはある。しかし、そこは目をつむらなければ、新しいことはやっていけない」と語り、悩みの種であることをうかがわせる。

そうしたリスクを承知の上でも、リニア放送がメインのAbemaTVとSVODがメインのビデオパスの両方を手に入れることは、動画配信で出遅れるテレビ朝日にとって魅力的だったようだ。

テレビ朝日とKDDIという、動画配信サービスで乗り遅れた同士が組むことで、NetflixやHuluに迫ることができるのか。まずはオリジナル作品の質が勝負になる。

井上 昌也 東洋経済 記者

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いのうえ まさや / Masaya Inoue

慶應義塾大学法学部政治学科卒業、同大メディア・コミュニケーション研究所修了。2019年東洋経済新報社に入社。現在はテレビ業界や動画配信、エンタメなどを担当。趣味は演劇鑑賞、スポーツ観戦。

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