保守党圧勝、離脱実現でも安心できない英国

ジョンソン首相、次の試練は短期間のFTA交渉

予想以上の圧勝だった。12日に投票所を訪れたボリス・ジョンソン首相(写真:ロイター/Henry Nicholls)

英国の未来を占う12日の総選挙は、ボリス・ジョンソン首相が率いる与党・保守党が大方の世論調査が示唆した通り、単独過半数の議席を獲得した模様だ。出口調査によれば、保守党は1987年の総選挙以来の圧勝、労働党は1935年以来の惨敗となった。今回の選挙はEU(欧州連合)からの離脱が争点。離脱実現を掲げる与党・保守党と、EUとの再交渉や国民投票のやり直しを公約に掲げる野党・労働党との戦いになった。

選挙戦を通じて保守党はリードを守ったが、最終盤で労働党がやや追い上げたほか、今回の選挙では自身の支持政党ではなく、EUからの離脱阻止に最も有効な候補者に投票する「戦術投票」の動きも広がっていた。小選挙区制の英国では、世論調査と投票結果が食い違うことも多く、世論調査通りの結果になるかが不安視された。だが、各調査会社は予測精度の改善に努めてきたこともあり、今回は“波乱なし”の結果に終わった。

労働党への不信感でEU残留派の票は割れた

労働党は改選前から大きく議席を落とし、5月の欧州議会選で躍進した残留支持のリベラル政党・自由民主党もわずかな議席増にとどまった。強硬離脱を主張する新興政党・ブレグジット党が保守党の現職議員のいる選挙区や野党が持つ接戦選挙区に候補者を擁立することを避けたため、離脱票が保守党に集中した。これに対し、労働党と自由民主党の間で残留票が分散し、結果的に保守党を利することになった。

EU残留支持の若者を中心に有権者登録が増え、戦術投票の指南サイトへのアクセス増加も伝えられたが、一部の残留支持者の間で労働党を率いるジェレミー・コービン党首、党内に残る反ユダヤ主義的な言説、曖昧な離脱・残留方針に対する不信感が払拭できなかったことが、残留票の分散につながった可能性がある。

2016年の国民投票から3年半が経過、離脱期限は3度にわたって延期され、必要な国内政策も棚上げされるなど、英国では時計の針が止まっている。業を煮やした多国籍企業の国外脱出や離脱後を不安視した移民労働者の流出も進んでいる。有権者の間では長い停滞にいら立ちの声も高まっており、「時間とお金の無駄」、「これ以上の停滞を望まない」、「とにかく前に進んで欲しい」といった意見も聞かれる。保守党の選挙スローガン「離脱実現(Make Brexit Done)」は、こうした有権者の心を掴んだ。

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