保守党圧勝、離脱実現でも安心できない英国 ジョンソン首相、次の試練は短期間のFTA交渉

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国民投票後の英国経済は、当初不安視されたような深刻な景気後退に陥っているわけではないが、成長ペースの下方屈折が起きている。離脱協議をめぐる先行きの不透明感から、企業の設備投資が手控えられ、海外からの直接投資や移民の流入ペースが鈍っている。工場を建てる、設備を更新する、新たな事業を始めるといった、中期的な視点に基づく経済活動がストップしてしまっている。

離脱協議に追われ、必要な国内政策も停滞している。離脱協議が始まって以来、議会下院では48本の法律案が成立しているが、このうち6本が離脱関連だ。その間の審議時間を集計すると、ざっと5分の1が離脱関連の審議に費やされてきた。相当な政治資源を離脱問題に集中してきた結果、政治的にナイーブな国民保険サービス(NHS)や社会福祉関連の改革が余り進んでいないとも伝えられる。

離脱問題による分断で、精神的な不調まで

離脱協議の停滞は市民生活にも影を落としている。国内世論を二分する「離脱」か「残留」かをめぐっては、親しい友人や家族の間で意見が割れることも珍しくない。友人関係や家族関係にヒビが入るケースもあり、最近では会話の中で離脱問題に触れることを避ける動きもあると聞く。テレビで連日流れる離脱関連のニュースにうんざりしている視聴者も多い。あるテレビ局は最近、離脱問題に関連した報道を一切流さないニュース番組の放送を開始し、話題になっている。離脱問題が原因で精神的な不調を訴える国民も少なからずいるようだ。

来週中にも召集される新議会で必要な立法作業を進め、10月に欧州連合(EU)とまとめた新たな離脱案に基づき、来年1月末にEUを離脱することになる。離脱阻止に向けた野党勢の最後の抵抗も予想されるが、改選後の議席分布を考えると、さらなる離脱期限の延期や離脱阻止の動きが成功するとは思えない。それでも、これで離脱問題とは“おさらば”というわけにはいかない。

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