安倍1強に広がる動揺、「逃げ恥作戦」の成否 年明け政局の焦点は「解散」にいつ踏み切るか
政府は国会閉幕後、事業規模約26兆円の経済対策を進めるための今年度補正予算、来年度予算両案の20日閣議決定を目指して、編成作業に全力を挙げる方針。それと並行して、インド(12月15~17日)と中国(23~25日)を訪問し、お得意の首脳外交で内閣支持率の低下傾向に歯止めをかける考えだ。
年明け以降の政局はやはり、「首相がいつ伝家の宝刀(解散)を抜くか」が焦点となる。ただ、選挙準備は遅れており、「(年明け解散の)可能性はほとんどない」(自民長老)との見方が多い。安倍首相は年明けの1月中旬に中東訪問を予定しており、通常国会召集は1月20日(月曜)が有力視されている。通常国会の冒頭では、政府が経済対策のために編成する大型補正予算案の審議・成立が必須だ。
補正予算成立後の解散・総選挙となれば、日程的には投開票日が2月下旬以降となり、その後の来年度予算案審議をいくら短縮しても、予算成立は5月連休前後までずれ込む。こうした理由から「疑惑などでよほど追い詰められない限り、首相が『信を問うときが来た』と判断するはずがない」(首相経験者)との見方が広がるわけだ。
解散の本命は五輪後の2020年秋
その後の政治日程をみても、通常国会後には東京都知事選(7月5日投開票)が予定され、7月24日から9月6日までは日本の威信をかけた東京五輪・パラリンピックが開催される。このため、首相が解散する場合の本命は「五輪後の2020年秋」(自民幹部)とみられている。
ただ、その時期は安倍首相の自民党総裁としての残り任期が1年足らずとなり、その時点で1強態勢が崩壊していれば、「追い込まれ解散で惨敗して、選挙後の退陣にも直結しかねない」(自民長老)とのリスクもはらむ。
主要野党が政権攻撃の切り札である内閣不信任案を見送ってまで通常国会での桜疑惑の追及にこだわるのも、「野党の追及に自民党内の反安倍の動きが連動すれば、安倍1強は完全に崩壊し、解散も打てなくなる」と読むからだ。
永田町で逃げ恥作戦と揶揄される安倍政権の一連の危機管理も「私物化疑惑で新たな証拠でも出れば『役に立つ』どころか一気に破綻しかねない」(閣僚経験者)という危うさが付きまとう。主要2閣僚が連続辞任した際、安倍首相は国会答弁で「説明責任は議員自身にある」と繰り返したが、当事者である菅原一秀前経済産業相や河井克行前法相らは、公の場での説明もせず、体調不良などを理由に雲隠れを続けている。
こうした状況について、反安倍の立場を鮮明にしてポスト安倍を目指す石破茂元幹事長は9日の石破派会合で、「自民党のコアな支持者が怒っている。第1次安倍政権や麻生太郎政権のときと(世論の)感じがやや似ている」と警鐘を鳴らした。安倍首相は9月11日に発足させた第4次安倍再改造内閣のキャッチフレーズを「安定と挑戦」としたが、「現状をみる限り『不安定と挫折』に変貌しつつある」(自民長老)のが実態といえそうだ。
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