なぜ「ナポリタン」が愛され続けているのか 「昔ながらの」が似合う不思議なパスタ料理

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1980年代を迎えるまで、日本においてスパゲティといえば有無を言わさずナポリタンだった。

新橋「ポンヌフ」のハンバーグスパゲティ。1967年の創業当時からの変わらぬ味(筆者撮影)

僕が好きなのはハンバーグスパゲティだったが、これはナポリタンの上にハンバーグがのっているもので、ほかにもカツスパゲティだとかコロッケスパゲティなんていうものもあったけど、ベースになるスパゲティはみんな同じナポリタンだったのだ。

状況が一変したのは、バブルの時代だ。ティラミスを筆頭にイタリア料理が大ブームとなり、パスタ屋なるものが日本のあちらこちらにでき始めた。ぺペロンチーノ、ボンゴレ、ペスカトーレ、カルボナーラなど本場イタリアのスパゲティメニューが洪水のように押し寄せてきたのだ。

そこで多くの日本人は初めて、本場イタリア料理にナポリタンはないと知ることになる。

そして同時期、「アルデンテ」という言葉をよく耳にするようになった。日本人はパスタの茹で方を間違えている、本当はパスタの芯を少し残すのが本場の茹で方、みたいなことが喧伝されるようになった。

ナポリタンの苦難の時代、そして復興へ

最初はおしゃれな人や食通の人たちが使っていたアルデンテという言葉が、そのうち猫も杓子もアルデンテと言い出すようになる。こうなってくると「平家にあらずんば人にあらず」的な感じで、アルデンテにあらずんばスパゲティにあらず、のような風潮が起こり出す。

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こうして「ナポリタンはダサい、ニセモノ料理」といった世相になっていく。ナポリタンを出す店は激減、風前の灯火になった時代があるのだ。

しかし、バブル崩壊後の喪失感とともに、それまで巷にあふれ、どこにでもあったナポリタンがなくなりそうになり、おじさん世代は初めて気づいた。あのケチャップ味の炒め麺。あれこそが、自分たちのソウルフードだったのだと。

2000年代半ばになってから、昭和レトロブームとともにナポリタンが再び注目されるようになってくるのだが、その復興は「ロメスパ」を抜きにしては語れない。

東京のナポリタンブームの中興の祖と言える「スパゲッティーのパンチョ」(筆者撮影)

ロメスパの「ロメ」とは「路傍の麺屋」のことで、立ち食いそば屋のような感覚で入れる気軽なスパゲティ屋さんという意味だ。茹で置きした極太麺を炒めて提供し、大盛りも可能などの特徴がある。

大手町の「リトル小岩井」、有楽町の「ジャポネ」といった老舗ロメスパは、いつでも行列の絶えない人気店としてご存じの方も多いだろう。

ロメスパの中でも、2009年に渋谷でオープンしたナポリタン専門のチェーン店「スパゲッティーのパンチョ」は東京におけるナポリタンブームの中興の祖と言えるだろう。

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