もし若手部下の直面する理不尽が、上司の脳の中で起きている現象によって引き起こされていて、それがやり過ごせるぐらいの理不尽さであったとしたら、そこでムダに戦わないという選択肢を選ぶべきだと私は思います。
戦わないことの最大のメリットは何でしょう。それは仕事で付き合っているうちに、上司の頭の中の仮説が書き換わる可能性が残るということです。もし根拠もなく悪い印象をもたれている上司と仕事でやたらとぶつかるようなことになれば、その後、上司の頭の中の前提が書き換わることは起きないでしょう。ムダに戦わずにやり過ごすということは、将来改善するかもしれないオプションをキープするという意味でもあるのです。
ダメな上司をうまくやり過ごすテクニック
ただ最後に「ただし」というアドバイスを付け加えさせていただきます。ただしこの場合にも絶対にやり過ごしてはいけないことが1つだけあります。それは上司に簡単な部下だとは思わせないことです。
相手は上司という権力を持ちながら能力がそのレベルにはない存在です。そのような上司になんでも「はい」と聞いてしまう簡単な相手だと誤認されると、嫌というほどこき使われる「パシリ」のような存在へと格下げされるリスクがあるのです。
ですから能力の低い上司に話を聞いてもらえないような状況に陥ったとしたら、聞いてはもらえない状況は諦めるとして、ちょっとだけで構わないのでその上司から「ただ命令すれば動く部下と違ってちょっと面倒くさいやつだな」と思われるように意図的に振舞う必要はあると考えてください。
実は、これは私が昔仕事をしたとても有能な上司から直接教わった手法です。変わる可能性が低い相手と付き合わなければいけない場合、問題を避けるテクニックとしては直接対決を避ける。しかし同時に問題を呼び込まないテクニックとして「『指示する際にちょっとだけ手間がかかる面倒なヤツ』であることをアピールする努力は忘れてはいけない」というのが私の教わった奥義だったのです。
ダメな上司とはムダに戦わないという生き方を「気に入らない」と考える読者も多いかもしれません。でもムダに戦う毎日にもし疲れたときにこの話を思い出していただけたら、やっぱりそれはムダなんだって気づくかもしれません。
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