日本のスポーツで「ハーフ選手」が急増する理由 来年の東京五輪でも多くの選手が活躍する

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外国出身の父親を持つ彼らは、将来的に自身が望めば、日本代表ではなく、父の母国の代表チームでプレーすることも可能だろう。だが、彼らはそろって、「そんなことは考えたこともない」と口にする。

日本で育った彼らは、こと国籍に関して言えば、ハーフという意識すらない。おかしな表現もしれないが、彼らは日本人以外の何者でもないのだ。鈴木は言う。

「小さい頃に海外で育って、となると、たぶん気持ち的にも違ってくると思うんですけど、自分はずっと日本で育って、日本でプレーしているんで、日本代表に誇りを持ってプレーできていると思います」

見た目が周りの人とは少し違うため、どうしても目立つ存在になってしまうが、普通に日本で生活する外国出身者が増えるなか、彼らのようなハーフの日本人は珍しい存在ではなくなりつつあるのかもしれない。

とはいえ、ハーフのアスリートの活躍が目立つのは、単に全体数が増えているから、だけではないだろう。

従来、日本人が世界のトップレベルと伍していくためには、競技を問わず、“日本人らしさ”を武器にすることが必要だとされてきた。

全員が規律を保ち、組織的にプレーすることで、パワーやスピードといった選手個々の能力で劣る部分を補う。その考え方はサッカーでも例外ではなく、U-17日本代表を率いた森山佳郎監督も、「組織的な連動や判断力」といった要素を重視していた。

もちろん、日本で育ったハーフの選手は、日本人のよさである秩序や勤勉さも持っている。だが、大坂や八村がそうであるように、彼らにはそのうえで、海外の選手にも対抗しうるだけのフィジカル的な強さが備わっているケースが多いのは確かだ。

187㎝85㎏という恵まれた肉体を持ち、それを持て余すことなく俊敏な動きを見せる鈴木彩艶はもちろんのこと、「身体能力は高くない」と控えめに語る藤田にしても、プレーをするときの背筋がピンと伸びた姿勢を見ていると、潜在的な身体能力の高さをうかがわせる。

ラグビーの躍進を支えたのも外国出身選手

ハーフのアスリートたちは、従来の日本人が劣るとされてきた要素において、アドバンテージを持っている選手が多いのだろう。

先のラグビー・ワールドカップ日本大会を振り返ってみると、彼らがもたらすメリットがわかりやすい。史上初めて決勝トーナメント(ベスト8)へ進出し、感動的なまでの奮闘が注目を集めた日本代表チームだが、そのメンバー構成、すなわち、多国籍な顔ぶれも話題となった。

サッカーをはじめとする多くの競技では、その国の代表選手となる資格が国籍主義であるのに対し、ラグビーの場合は協会主義。詳細は割愛するが、その国で(その国のラグビー協会に所属するチームで)一定期間プレーをしていれば、国籍を有していない国の代表選手になることも可能なのが、ラグビーのルールである。

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