「子どもの大ケガ」家の中だからこそ危ない理由 「気をつけよう」では事故はなくならない

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それは「気をつけましょう」という啓発がほとんど意味をなしていないということでもあり、具体的な予防が行われていないことは大きな問題です。

例えば、小さな子どもであれば、家庭内で熱傷を負ってしまうことがあります。とくに広く普及している電気ケトルは0歳から1歳の子どもの力でも十分に倒すことができ、転倒したケトルからお湯が漏れて、ひどい熱傷につながるなど重症度も高い。

日本小児科学会雑誌の傷害速報の報告によれば、生後11カ月の子どもが電気ケトルにぶつかり、ケトルが倒れて熱湯がこぼれ出た結果、腹部の広い範囲が熱湯に浸って重症化した事例がありました。

その子は皮膚移植をすることになり、1年間の医療費は500万円以上かかったそうです。

「気をつけなくてもいい製品や環境」をつくる

――そうした事故を防ぐためには、どうすればいいのでしょうか。

まず「気をつけましょう」という注意で事故はなくならないという認識を持つことです。「あれも危ない」「これも危ない」「子どもから24時間目を離すな」といった注意は、育児負担を強要しているようなもの。

交通事故についても、再発防止につなげる仕組みがもっと必要だ(写真:リディラバジャーナル)

社会として取り組むべきは、育児負担の強要ではなく、育児支援となるような解決策を提示することです。それはつまり、育児を取り巻く環境をどう変えるかということです。

例えば、先ほどの電気ケトルであれば、転倒してもお湯が出ないような湯漏れ防止機能が付いた製品開発などがあります。

現状でも電気ポットは事故予防の観点から「横方向および後方向とも転倒後10秒間の湯の流出水量が50ml以下でなければならない」と法令で決められており、それをクリアしないと販売できません。子どもの安全を考えると、こうした基準をより厳しくしていくことも必要だと思います。

交通事故でも「安全運転を心がけましょう」といったところで事故は減りません。事故はすでに数多く起こっているからこそ、個々の事故を検証し、再発防止につなげる仕組みが必要なんです。

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