「子どもの大ケガ」家の中だからこそ危ない理由 「気をつけよう」では事故はなくならない
「子どもの安全を考える際、とにかく『気をつけましょう』と言われます。ただほとんどの保護者は子どもに危険が及ばないように気をつけているし、それでも起こってしまうのが事故なんです。『気をつけていれば起こらなかったはず』といった考え方は、育児負担を強要しているようなものです」
そう話すのは、子どもの傷害予防などの活動を行うNPO法人Safe Kids Japan理事長の山中龍宏さん。小児科医でもあり、子どもの事故予防に取り組んでいる。
「子どもの安全」といえば、事件に巻き込まれる事態が想定され、「どのような防犯をするべきか」というテーマにフォーカスされることが多い。本特集も「防犯」を主眼に学校や地域コミュニティーのあり方について言及してきた。
だが、子どもの安全を脅かす危険は家庭内にもある。昨今は保護者が子どもに危害を加える虐待が話題になっているが、一方で「不慮の事故」で命が失われるケースも少なくない。
消費者庁が公表している「子どもの事故の現状」(2010~2014年)では、1~14歳までの子どもの死因で「不慮の事故」が全体の2位(1位は悪性新生物)。
またそれらの事故の発生場所も、道路や駐車場などに次いで住居が多い。死亡につながらなくとも、子どもが重症に至る事故は決して少なくない。
こうした不慮の事故の多くは保護者の注意不足によるものとされてきた。だが、「ただ『気をつける』という予防のあり方そのものに限界がある」と山中さんは指摘する。
では、どうすればいいのか。不慮の事故を防ぐために必要なことについて聞いた。
「気をつける」では限界がある
――山中さんは30年以上、子どもの安全の領域に携わっているということですが、子どもの事故についての現状や課題について教えてください。
われわれのような医療機関には日々ケガをした子どもが運ばれてきますが、それは毎日毎日、同じような事故が同じように起きていることを意味しています。
子どもの事故の発生件数を見ると、昨年と今年とでまったく減っていない。まるでコピーしたような数字が並んでいます。子どもが事故に遭えば、「二度と同じ事故を起こさないように」となりますが、結局また同じことが起きてしまっているのが現状なんです。