先進国と中国は、すでに人口オーナス期に入っています。2030年にかけては、ASEAN諸国の多くも人口オーナス期入りすると見込まれます。
その結果、これらの国の成長率が低下することが予想されます。とくに、中国の経済成長率の低下幅は大きい可能性があります。
これに対して、労働力人口の増加が継続すると見込まれるインド、フィリピンでは、高い成長率が期待されます。
ただし、実際の経済成長がどうなるかは、人口以外のさまざまな要因によっても影響されます。
労働人口増加率が高くても、就学率や識字率が低ければ、経済成長は実現できないでしょう。
逆に、高所得国が技術革新を続けて、より豊かになるという可能性は、十分にあります。
将来に向かう世界を規定するシナリオとして、つぎの2つが考えられます。第1は、高所得国の技術開発が主導するシナリオ。第2は、労働力の人口増が著しい低所得国が、中所得国や高所得国に追いついていくというシナリオです。
この2つのいずれが支配的になるかが、今後の世界の姿を決めていくと考えられます。
この問題を考える際に、先に述べた「予測の自己実現効果」は重要な役割を果たすでしょう。つまり、将来の成長率が高いと考えられる国には投資が集まり、実際に高成長が実現するということがありうるでしょう。
ただし、こうしたことが実現できるかどうかは、国際的な資本移動がどのような制度や仕組みで行われるかにも、大きく影響されます。
経済成長予測の具体的な数字は、後の回で見ることとします。
日本は人口オーナスの影響が最も深刻な国
人口オーナスが最も顕著な形で現れるのが日本です。生産年齢人口の伸び率は、日本では2000年代からすでにマイナスでしたが、今後もその傾向が続きます。
日本の人口構成を人口ピラミッドの形で見ると、図表2~4のとおりです。
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