言うまでもないことですが、将来の世界は、大きな不確実性に包まれています。景気変動などの経済的ショックがあります。大規模な自然災害もあります。長期を見れば、技術革新とその普及など、予測困難な要素は数多くあります。
また、すべてのことが予測できるわけではありません。とりわけ株価や為替レートについては、予測をすることが原理的に不可能です。予測の結果が投資行動に影響を与えてしまうからです。
このように、経済予測には大きな困難を伴います。
「予測の自己実現効果」もある
また、「予測の自己実現効果」ということもあります。
例えば、AI(人工知能)やビッグデータといった分野が将来有望だと予測されると、その分野に優秀な人材が集まり資金も投入され、その結果、実際にその分野が成長することになります。
逆に、原子力に関する社会的な制約が強くなって、人材や投資が集まりにくくなり、技術開発が停滞する可能性もあります。
また、後に述べる人口構成の面などから、ある国の将来の成長率が高くなると予測されると、その国に対する投資が積極的に行われ、実際にその国が成長するということも大いに考えられます。
将来を予測する1つの方法は、マーケット(市場)の状況を見ることです。
スタートアップ企業やユニコーン企業(未公開で企業価値が高く評価される企業)が多い分野は、将来の成長可能性が高い分野だと考えることができるでしょう。
あるいは、大学や大学院で、人気があって競争率が高い学部や専門学科はどこか、学生の就職先として人気のある業種はどこか、なども参考になるでしょう。
ところで、数カ月から数年先といった短期の予測と、数十年もの期間にわたる長期の予測を比べた場合、一見したところ、長期の予測のほうが難しいように思われます。遠い将来ほど、不確実な要因が多くなるからです。
そうした側面は確かにありますが、経済的事象についていうと、短期的な予測のほうが難しい場合もあるのです。短期的な変動は、ランダムな要因によって引き起こされる場合が多いからです。
ある程度以上の期間をとれば、ランダムな要因による短期的な変動は平準化され、長期的な趨勢だけが問題となります。そして、長期的な趨勢のほうが予測しやすい面もあるのです。
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