島根県の「小さな島」が3年連続で人口増の裏側 人口635人の村でいったい何が起きたのか?

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翌2017年3月には、島留学生たちが住む「知夫里島はぐくみ寮」が完成しいよいよ島留学が本格スタート。4月9日、5人の島留学生が入寮した。出身は大阪府1人、兵庫県1人、福岡県2人、島根県1人だった。スタートしてから3年目の2019年時点では、この寮に7人の島留学生が生活している。村や、教育委員会の全面サポートの下、寮はハウスマスター4人と調理員合わせて5人のスタッフが運営している。

「島留学で学び、育った子どもたちが大きくなって社会に出るときに、再び知夫村のことを思い出して帰ってきてくれたらと思います」(前出の担当者)

数年前には、知夫島に遊びに来たことがきっかけで島が大好きになったという大阪の女性が村の教育委員会の職員に採用されるといううれしいニュースもあった。

結婚祝い金は100万円

島留学以外の定住促進政策、子育て支援制度も充実している。「知夫村産業振興担い手支援事業」では、畜産、水産業などの産業振興のために担い手となる人に生活支援金を支給。起業支援制度もある。対象者は55歳未満のU・Iターン者、住民登録、10年以上居住意思がある人。生活支援金は、Iターンは月額12万円、Uターンは月額11万円。支給期間は最長2年間。起業支援の貸付金は上限300万円となっている。

住宅取得のための支援制度もある。「知夫村定住促進支援事業」で、5年以上の定住を条件に、新築住宅・土地取得、住宅のみ取得の場合で100万円、引っ越し費用20万円が助成される(金額は上限)。

子育て支援は広範囲に及んでいる。妊婦検診診察費用(最大15回)、妊婦検診交通費、出産のための宿泊費、新生児聴覚検査費用など至れり尽くせりである(上限あり)。18歳までの子ども(0歳児から高校3年生)までの医療費も無料である。それだけではない。出産祝い金も奮っている。第1子・第2子は50万円、そして第3子以上は何と100万円というから太っ腹だ。

結婚祝い金もある。「夫若しくは妻のいずれか又は、双方が知夫村に住んでいて、結婚後5年以上知夫村に住所を有し、居住することが確約できる者に対して100万円の結婚祝い金支給します」(同村のHP)。

村の将来を見越し、子どもたちにいかに力を注いでいるか、思いをかけているかがわかる支援制度である。

3年連続で人口が増えたとはいえ、全盛期に比べればまだまだである。とはいえ、子どもたちへの手厚い支援と熱い愛情、若者たちの行動力で島は確実に変わりつつある。離島という逆境を逆手に取り、小さな、静かな村だからこそできる「少人数協育」を理念に掲げ、島留学という将来を見据えたプロジェクトの実践で危機を乗り越え、村を変革していこうとしている小さな自治体の取り組みに注目していきたい。 

山田 稔 ジャーナリスト

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やまだ みのる / Minoru Yamada

1960年生まれ。長野県出身。立命館大学卒業。日刊ゲンダイ編集部長、広告局次長を経て独立。編集工房レーヴ代表。経済、社会、地方関連記事を執筆。雑誌『ベストカー』に「数字の向こう側」を連載中。『酒と温泉を楽しむ!「B級」山歩き』『分煙社会のススメ。』(日本図書館協会選定図書)『驚きの日本一が「ふるさと」にあった』などの著作がある。編集工房レーヴのブログでは、最新の病状などを掲載中。最新刊は『60歳からの山と温泉』(世界書院)。

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