日本企業の信用力指標は大幅に悪化、景気悪化の影響が鮮明に《スタンダード&プアーズの業界展望》

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アナリスト 小林 修
吉村 真木子

スタンダード&プアーズは、日本の事業会社の信用力指標の年次調査を実施した。格付けを付与している日本企業(総合商社、金融機関とノンバンクを除く)58社に、日本株の包括的な株価指数である「S&P JAPAN 500」のなかから、「TOPIX150」と「Mid100」の構成企業(総合商社、金融機関とノンバンクを除く)を抽出して加えた計223社を対象に、過去5年度(2004~2008年度)の信用力指標の推移を分析した。

2008年度(大半が2009年3月期)の信用力指標は、2008年9月の「リーマンショック」以降に世界的に広がった金融危機と急速かつ深刻な景気悪化の影響を受けて、大幅に悪化した。世界的な不況のなかで日本企業が事業環境の激変に直面したことは、近年、安定的な伸びを示していた売上高の変化に顕著に表れている。調査対象企業の売上高総額は前年度比8%減少した。売上高減少を受けて収益力・キャッシュフロー創出力が大幅に低下した結果、有利子負債に対するFFO(運転資本の増減調整前ベースの営業キャッシュフロー)の比率(中央値)が前年度の36.6%から22.3%へ大幅に低下したのをはじめ、償却前営業利益(EBITDA)インタレスト・カバレッジや、資本総額に占める有利子負債の比率(「以下「総資本有利子負債比率」といった、スタンダード&プアーズが分析上、重視する指標が軒並み大幅に悪化した。

収益性指標の悪化は製造業で顕著

償却前営業利益率(EBITDA/売上高)や投下資本利益率といった収益性指標は、信用力指標の全般的な改善傾向が収束した2007年度もほぼ横ばいを保っていたが、2008年度は急激に悪化した。償却前営業利益率の中央値は調査対象企業(223社)で前年度の12.9%から9.5%に、格付け先企業(58社)で13.7%から8.8%に悪化、投下資本利益率も調査対象企業で10.7%から4.9%に、格付け先企業で10.6%から4.0%に急低下した。2008年秋以降の世界的な景気悪化は、製造業の稼働率を急低下させ、円高傾向の影響も相まって、経験したことのない急激な業績の悪化に日本企業を陥れた。

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