日本企業の信用力指標は大幅に悪化、景気悪化の影響が鮮明に《スタンダード&プアーズの業界展望》

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 総資本有利子負債比率の中央値は、製薬、鉄道のほか、パーソナルケア、通信、電力・ガスといった業種が安定した推移を保っているほかは、大半の業種で悪化した。近年、資本・負債構成を着実に改善させてきたエレクトロニクス・電気機器、重工業などでは、2008年度の悪化によってその改善が帳消しになった。また、収益性指標の落ち込みがそれほど目立たなかった食品・飲料で悪化幅が大きかったほか、小売りでも悪化した。

格付けの下方遷移圧力は引き続き強い

スタンダード&プアーズの格付け動向をみると、日本の事業会社では2003年以降、格上げ件数が格下げ件数を上回って推移し、とりわけ2007年には格上げ45件、格下げ1件と、格上げ件数が格下げ件数を大きく上回っていた。しかし、2008年8月以降は、格付けやアウトルックの上方修正が1件もなく、2008年7~9月期から5四半期連続で格付けの下方遷移傾向が続いている。

アウトルックと「クレジット・ウォッチ」を合わせたベースの構成比は、9月末現在で「安定的」が60%、「ポジティブ」が2%、「ネガティブ」が38%であり、ソブリン、金融、学校法人、地方自治体の各セクターに比べて「ネガティブ」傾向が強い。「クレジット・ウォッチ」は格付けを見直し中であり、アウトルックは長期会社格付けの向こう2年程度(格付け水準が「BB+」以下の場合は1年程度)の見通しを示すものであることから、格付けの下方遷移圧力は引き続き強いとスタンダード&プアーズは考えている。

信用力指標の回復には長期間を要する可能性

スタンダード&プアーズでは、日本経済が最悪期を脱し、緩やかながらも回復を続けているとみているが、事業会社の業績見通しはまだ不安定であり、信用力指標の改善を推進する力はまだない。景気回復の勢いが乏しいなかでは、競争環境や業界構造の違いによって恩恵を取り込める度合いに差が出やすくなると考えられるため、食品や製薬でみられたように業界再編やM&Aの機運が高まりつつあることの影響も相まって、信用力指標の回復ペースには業種間で開きが出てくる可能性があるとみている。日本の事業会社を取り巻く不透明要因はいまだに多く、信用力指標の回復には長期間を要する可能性があるとみている。

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