「不倫夫の自殺」で1000万円請求された妻の告白 事故物件化した賃貸にのしかかった賠償義務

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しかし戦いの日々を続けるうちに、ぺるみさんは精神的にかなり追い込まれてしまったという。

「すごく疲れてしまいました。

寝てるあいだに、夫が子供を連れに来るんじゃないか?と不安になるんですですね。夫が空からわが家に近づいてくる夢を見て

『ああ夫が、娘たちをあちらの世界に連れていくために来たんだ』

と思い、悩みました」

ぺるみさんが役所の相談窓口に行くと

「カウンセリングに行ってください」

と言われたという。

「病院で診断を受けると『うつ病ではないが、うつ状態です』って言われました。お薬はもらいましたけど、説明書を見ると『アルコールと一緒に摂取しないでください』と書いてありました。

当時はアルコールで気を紛らわせていたので、結局薬は飲みませんでした」

5分おきに『死にたい……死にたい』と電話した日々も

その頃は、落ち込むたびにお姉さんに電話もしていたという。

ぐみさんは当時の様子を語る。

「5分おきに『死にたい……死にたい』って電話してくることもありました。相談を受けてるうちに、こっちの精神が壊れてしまいそうになりました。ただ、妹の扱いは慣れているので、

『死ぬ前にどっか旅行行く?』

とかなんとか気をそらしました」

ぺるみさんの夫が亡くなって数年が経ち、今は姉妹と家族の皆さんは平穏に生活しているという。

単行本を上梓した後は、知人から

「実はウチも……」

と、近しい人の死についての悩みを打ち明けられることが何度もあったという。

ぺるみさんの夫がどのようなつもりで、自室で縊死したのかは今となってはわからない。

ただ、おそらく彼が想定していた以上に、妻や子供たちに影響があったのではないだろうか。

ぺるみさんの夫に限らず、自ら死を選ばなければならないという状況や心境は、想像を絶するほど心身共に追い詰められている。ただ、“自殺”は、本人が想像している以上に身内や他人を傷つけてしまう行為でもあるのだ。

【2019年12月12日14時50分追記】初出時のイラストの掲載を一部見直しました。

村田 らむ ライター、漫画家、カメラマン、イラストレーター

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むらた らむ / Ramu Murata

1972年生まれ。キャリアは20年超。ホームレスやゴミ屋敷、新興宗教組織、富士の樹海などへの潜入取材を得意としている。著書に『ホームレス大博覧会』(鹿砦社)、『ホームレス大図鑑』(竹書房)など。

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