COP25にどう臨む、小泉氏が語る「脱炭素戦略」 石炭火力発電に依存する日本、脱却の道は?

拡大
縮小

インタビューでは、CO2を大量に排出する石炭火力発電のあり方にも議論が及んだ。イギリスやフランスなどの欧州諸国は、期限を定めたうえで石炭火力発電所を閉鎖する方針を打ち出している。また、アメリカも、トランプ政権が石炭産業への支援を表明しているものの、再生可能エネルギーや天然ガス火力発電との競争に敗れた石炭火力発電所の閉鎖が相次いでいる。

末吉竹二郎氏は石炭火力の段階的廃止に向けた努力を強調した(撮影:今祥雄)

これに対して、日本はエネルギー基本計画において、2030年度の発電電力量に占める石炭火力の割合を26%と設定しており、新増設計画も全国各地に存在する。また、ベトナムやインドネシアでの石炭火力発電所の新設も日本は官民で支援している。

こうした実態を捉えて、末吉氏は石炭問題における日本の論理と世界の論理が大きく食い違っていると指摘。「(石炭火力発電所の段階的廃止に向けて)海外と議論のベースを共有する必要がある」と述べた。そのうえで、石炭利用をやめる方向での努力がなければ、「いかに日本が気候変動問題に関して優れた取り組みをしていたとしてもその点がなかなか伝わらない」と警鐘を鳴らした。

石炭火力発電存続で「化石賞」を受賞

こうした末吉氏の指摘について小泉氏は共感を示したうえで、「石炭というファクターがあるため、日本が胸を張れることすら見向きもされなくなってしまう。そうした現状を変えたい」「私自身の中でも、大臣という立場と、自分の思いとのジレンマを感じることがある」などと危機感をあらわにした。

折しもCOP25開催中の12月3日、世界の環境保護団体で作る「気候行動ネットワーク」は日本とオーストラリア、ブラジルの3カ国に「化石賞」を授与すると発表した。これは、梶山弘志経済産業相が同日の記者会見で、石炭火力発電を選択肢として残していく方針を示したことに対する反発の意思表明だ。国連のグテレス国連事務総長は12月2日、COP開催に際して各国に石炭火力発電への依存をやめるように呼び掛けていた。同じ政府の一員である小泉氏が批判の矢表に立つ可能性もある。

パリ協定を踏まえ、各国は産業革命以降の平均気温の上昇を2℃以内に抑えることを目指して温室効果ガスの削減目標を示している。しかし、各国の公約数字を合計するだけでは2℃目標は守れず、3℃以上の気温上昇が避けられないと言われている。

気温上昇がこのまま続くと、サンゴ礁や北極の海氷が消滅し、永久凍土が溶け出してメタンなどCO2よりはるかに影響が深刻な温室効果ガスが大量に大気中に放出される事態も予想されている。

こうしたことからCOP25では、各国が自国の排出削減目標を上積みし、脱炭素化に向けた決意を示せるかが焦点だ。小泉氏は世界の期待にどう応えるか。若者世代の声を代弁すると言われる政治家の言動に注目が集まっている。

『週刊東洋経済』12月14日号にも掲載している小泉進次郎環境相のロングインタビューを『週刊東洋経済プラス』で配信しています。
岡田 広行 東洋経済 解説部コラムニスト

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

おかだ ひろゆき / Hiroyuki Okada

1966年10月生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。1990年、東洋経済新報社入社。産業部、『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部、企業情報部などを経て、現在、解説部コラムニスト。電力・ガス業界を担当し、エネルギー・環境問題について執筆するほか、2011年3月の東日本大震災発生以来、被災地の取材も続けている。著書に『被災弱者』(岩波新書)

この著者の記事一覧はこちら
関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT