交通手段断たれても会社へ行く人の危うい思考 法人に対してなぜ「人格」を持って考えるのか

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これまで世の中は4つの異なる役割が互いに調和しながら発展してきたと考えています。わかりやすいように国で表現していますが、これはどこの会社や組織にも当てはまる分類です。

魂なきバンカーは、そのうちの一角を占める「東の国」で顕著に現れます。詳しくは『分断を生むエジソン』をご覧いただきたいですが、4つの国の特徴については以下のとおりです。

東の国伝統的経済の中心地。アメリカでいえばニューヨーク
西の国技術革新が生まれる地。アメリカでいえばシリコンバレー
中部 :ルールを執行して全体最適を目指す。アメリカでいえばワシントンDC
南部 :上記の3種以外の、生活や家族など実生活に主義を置く人々。数がいちばん多い

あなたの周りにも、伝統的なやり方を大切にしている方もいれば、新たな挑戦に価値を置く方もいるでしょう。

東の国はどんな国か

東の国は、経済や組織を重要視する集まりです。アメリカならニューヨーク、日本なら丸の内に本社を構えているような、上場企業や伝統的な大企業が該当するでしょうか。全体としてはやや保守的です。

これまで日本の経済を作るという重要な役割を果たしてきました。ただ、何より成長を重視してきたがゆえに、行きすぎると目的なき成長=魂なきバンカーという病を患ってしまいます。

人はそもそも、自分の身近な5人を通じて世界を認識するといわれています。冒頭の満員電車の話も同じです。なぜ、人は集団になると、適切な行動が取れなくなるのか。それは、周りの5人だけを通じて世界を認識しているからです。自分を除いた、ほかの身近な4人が取る行動を見て、自分もどう振る舞うのか? を決めているのです。

『分断を生むエジソン』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

しかし、冷静に俯瞰してみると、どう考えてもおかしいことが世の中にはたくさんあります。それを理解するには、今、自分たちは、どんな場所にいて、どんな役割を期待されているのか? をメタ認知(自身の認知のあり方を、俯瞰して客観視して捉えること)することからスタートするしかありません。魂なきバンカーの病、それはミーム(人間が文化として繋いでいくべき習慣や情報)の消失にこそあります。

私たちは気を抜くと、役割が同じ人を「自分たち」、役割が異なる人たちを「ほかの人たち」と区別することが往々にしてあります。

狭い世界認識は多くの人々を不幸にすることがある。だからこそ、広く正しい視点で世界を再認識する必要があるのです。これからの時代は分断を生み出すのではなく、4つの国のそれぞれの価値観を調和し、分断をつなぐことのできるリーダーが求められています。

北野 唯我 ワンキャリア最高戦略責任者

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きたの ゆいが / Yuiga Kitano

兵庫県出身。神戸大学経営学部卒。就職氷河期に博報堂へ入社し、経営企画局・経理財務局で勤務。その後、ボストンコンサルティンググループを経て、2016年、ワンキャリアに参画。執行役員として事業開発を経験し、現在同社の最高戦略責任者、レントヘッドの代表取締役。著書に『転職の思考法』(ダイヤモンド社)、『天才を殺す凡人』(日本経済新聞出版社)がある。

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