ナイトスクープに見る「ウケる地方番組」の本質 たかじんも予見していた「ローカル」の強み
最近では、松本や岡村隆史など、関西出身の芸人が関西ローカルでレギュラー番組を持つ例が増えている。そこでの彼らは、東京の番組では見せないリラックスした素顔を見せる。限られた制作費で作られているローカル番組は、全国レベルの出演者にとっては、肩の力を抜いて楽しめる仕事にもなりうるのだ。
また、ローカル番組では、予算不足を逆手に取って、全国ネットでは実現が難しいような挑戦的な企画が行われることもある。もともと大阪のテレビ業界ではそういうものを作るべきだという風潮が根強くあったようだ。「東京のテレビに制作費では負けるかもしれないが、面白さでは負けへん」という意気込みを持っている制作者が大勢いた。
笑福亭鶴瓶、上岡龍太郎という話芸の達人2人によるトークショー『鶴瓶・上岡パペポTV』(読売テレビ)、テレビにまつわるさまざまな実験的な企画で話題になった『EXテレビ』(日本テレビ・読売テレビ)など、数々の伝説的な番組がそんな風土から生まれている。もちろん『探偵!ナイトスクープ』もそのような番組の1つだ。
たかじんが「東京ネット」を拒んだ理由
そもそもローカル番組には実験的な企画や攻めた企画を実現しやすいという強みもある。全国ネットで放送される番組よりも影響力が少ないため、思い切った試みができる場合があるのだ。
そのことを誰よりも理解していたのが、2014年に亡くなった歌手のやしきたかじんである。彼は主に大阪で冠番組を多数持つ売れっ子のテレビタレントだったが、東京嫌いを公言していて、自分の番組を東京で流すことをかたくなに拒んでいた。
とくに、過激な政治的主張が飛び交うことも多い討論バラエティー番組の『たかじんのそこまで言って委員会』(読売テレビ)は、東京で放送されることはなかった。東京で放送されると自由が奪われて好きなことが言えなくなる、というのがたかじんの考えだった。
ここまでに挙げたローカル番組の強みとは、「低予算」「限られた地域でしか放送されない」といった欠点を逆手に取ったものだった。当然ながら、制作費が少ないことや、地域限定放送であることは、本来ならば弱点として数えられるべきものだ。
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