インフル「耐性」を極度に恐れる必要はない理由 1回服用で済む薬「ゾフルーザ」への期待と懸念
ゾフルーザの耐性化がここまで大きなニュースになるのは、ゾフルーザへの関心が高いからだ。医療界はゾフルーザに大きな期待を寄せている。それはタミフルなどの従来のインフルエンザ治療薬とは作用機序が違うからだ。
Weblio辞書から引用すると作用機序とは「薬物が生体に何らかの効果を及ぼす仕組み、メカニズムなどを意味する」。昨年10月、米食品医薬品局(FDA)のスコット・ゴットリーブ長官(当時)は、「FDAとしては新しいメカニズムで作用するインフルエンザ治療薬を約20年ぶりに承認した」とコメントしている。
ゾフルーザに対する懸念は払拭できるのか
耐性化を招かないように、この薬を大切に使うというのは医療界のコンセンサスだ。亀田総合病院(千葉県鴨川市)では、昨年度、ゾフルーザを採用しなかった。
その理由を細川直登・感染症科部長は「エムスリー」のインタビューで「ゾフルーザの懸念点は耐性です」と説明している(「ゾフルーザ不採用の亀田、インフルエンザ治療のそもそも論」2019年1月28日配信)。
さらに「重症化や合併症のリスクを持たない12~64歳のインフルエンザ患者を対象とした第2、3相臨床試験で、インフルエンザの有症状期間がプラセボに対して26.5時間有意に短縮し、タミフルに対しては非劣性を示したという結果でした」とも付け加えている。非劣性とは、タミフルに対して劣っていないという意味で、タミフルより優れたことを示したわけではない。
ただ、細川氏もゾフルーザは評価している。細川氏が、同インタビューで紹介したのは、妊婦や高齢者などのハイリスク患者を対象とした「CAPSTONE-2」という臨床研究だ。この研究では、ゾフルーザ投与群のほうがインフルエンザ合併症の発症率が有意に減っていた。彼は、ゾフルーザを重症患者にとっておくため、「今は使わないと決めた」という。
ここまで厳格な医師は多くはないが、「ゾフルーザの濫用は慎むべき」というのが医療界の趨勢だ。日本感染症学会は、今年10月24日に発表した「~抗インフルエンザ薬の使用について~」という提言の中で、「12~19歳および成人:臨床データが乏しい中で、現時点では、推奨/非推奨は決められない」としている
ただ、私の個人的な経験では、外来診療でインフルエンザと診断された患者の中にはゾフルーザの処方を希望する人が少なくない。1日に1回の服用で済むというのは患者にとって大きなメリットだ。
「ゾフルーザやタミフルを服用しても、発熱が1日程度短くなるだけだから、私は処方しない」という医師もいるが、これも患者の共感は得にくいだろう。私もインフルエンザにかかった経験があるが、あの苦しさが1日短くなるのなら、ぜひ服用したいと思う。
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