「不妊治療の裏側」を25年見てきた人が語る真実 意外と知らない、適切な医師や病院の選び方

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多くの晩婚さんが直面する「不妊治療」について、有識者にアドバイスをもらいました(写真:Chinnapong/iStock)

35歳以上で結婚した「晩婚さん」を訪ね歩いている本連載。子どもを産み育てたい女性の場合、新婚でもいわゆる高齢出産になることが必至である。自然に妊娠しなければ諦めるという夫婦がいる一方で、結婚直後から不妊治療を受ける人も少なくない。

不妊治療の結果、待望の子どもができたという人は筆者が周囲で取材した範囲では半数以下だ。高額の費用と痛みを伴う治療に耐えながら、長い間病院に通い続けている人もいる。「すでに数百万円も投入した」「妻が必死に頑張っているのでやめようとは言い出せない」という声も聞く。不妊治療は、多くの晩婚さんが直面している重大なテーマなのだ。

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これから不妊治療の受診を考えている晩婚さん向けに、医療機関の選び方や注意点、治療の最前線などのアドバイスがほしい。

適任の人がいる。日本における不妊治療の草創期からMRとして不妊治療専門の病院や医師たちと関わってきた経歴を持ち、現在は産婦人科・不妊専門病院に特化したコンサルティング会社・メディエンスを経営している池上文尋さん(52)だ。

排卵誘発剤で世界シェア6割の会社へ

――まずは池上さんのプロフィールを教えてください。

私は北里大学獣医学部の動物資源科学学科で学びました。獣医になるのではなく、家畜の子どもをいかに増やし、育てるのか、また家畜の卵、肉、乳をどのように活用するのかを主に研究するコースです。新卒での就職先は製薬会社の日本チバガイギー(現・ノバルティス)で、動物の薬ではなく人間の薬をプロモーションする部署に配属されました。その後、地方の大きなクリニックの事務長を経験し、セローノジャパン(現メルクセローノ)というスイスの製薬会社に転職したのは1995年です。

当時、セローノは排卵誘発剤(不妊治療薬の一分野)で世界シェアの6割を握っていました。当時、日本では不妊治療(高度生殖医療)が始まったばかり。大学病院では思うような治療ができないと感じた医師たちが独自のクリニックの開業を志していました。セローノはそんな開拓者たちを陰ながら支える会社だったのです。

私はMR(医薬情報担当者)として京都全域と大阪の一部を担当していましたが、当時小さい業界だったので、日本のどのエリアにどんな先生がいるのかなどはわかるようになりました。医療機関に行くといつも先生が待ち受けていて、「海外ではこの薬をどう使っているのか」「ほかの先生はどうしているのか」と質問攻めにされる毎日でした。

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