それでも「得意より好き」を優先すべき深い理由 子どもをどんどん伸ばすには秘訣がある

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【ケース3】「好き」であるため、「得意」になった
「好きこそものの上手なれ」という言葉があるとおり、好きであるとそれを継続する可能性が高まり、「継続は力なり」の原則が働いて、やがて「得意」になっていく場合があります。重要なことは、「継続」ということです。もちろん、間違った方法で継続しては、いつまでも上達しませんが、基本的には継続すると力になります。その場合は、「好き」が「得意」となっていくことでしょう。
【ケース4】「好き」だけれども、「得意」にはならなかった
「好き」であっても、「得意」にならない場合、つまり上達しない場合は、やっている方法が正しくないか、上達しなくても楽しければいいと思っていることがほとんどです。

小山さんのお子さんの場合、ピアノは好きで弾いているようですから、楽しいことでしょう。親としてはお金を払って習い事に通わせているのだから、上達してもらいたいと思う気持ちはあることでしょうが、仮に上達しないとしても、本人が楽しいと感じていることはとても健全なことだと思います。

以上から、総合的に勘案し、確率論的に考えると、小山さんのご質問に回答すると次のようになります。

「『得意』よりも『好き』を優先する」

どうして「好き」を優先するのか?

それは次のような理由があるからなのです。

「好きなことは、人から言われなくても勝手に行い、没頭でき、継続できる可能性が高いため」

すると、継続は力なりで、やがて結果を出していく可能性がぐっと上がります。さらに決定的な理由があります。それは、好きなことをやっているときは「他者との比較をしないケースが多い」ということなのです。好きなことを追求しているときは没頭しているため、周囲は見えません。ですから、比較のやりようがありません。

この他者との比較というのは、非常に厄介なものなのです。人と比較をして自分が優っていると、油断を生みます。イソップ物語の「ウサギとカメ」に象徴されるように。また、人と比較して劣っている場合は劣等感が募り、自己肯定感が下がり、自分に限界を作るというさらに厄介なことが起こります。

いずれにせよ、他者との比較は意味がないことが多いと考えていいでしょう。好きなことを追求していくと、そのプロセスには「比較」が存在しにくいため、周囲に惑わされずに、いつの間にか一流になっていくということもあるのです。

小山さんの例で言えば、ピアノが好きな子ですから、その「好き」を徹底して追求し、今後も続けていくといいでしょう。

石田 勝紀 教育デザインラボ代表理事、教育評論家

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いしだ かつのり / Katsunori Ishida

1968年横浜生まれ。20歳で起業し、学習塾を創業。4000人以上の生徒に直接指導。講演会やセミナーを含め、5万人以上を指導。現在は「日本から 勉強が嫌いな子を1人残らずなくしたい」と、Mama Cafe、執筆、講演を精力的に行う。国際経営学修士(MBA)、教育学修士。著書に『子ども手帳』『子どもを叱り続ける人が知らない「5つの原則」』、『子どもの自己肯定感を高める10の魔法のことば』ほか多数。

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