過去より幸せになる「大人の再婚」密かな醍醐味 若い頃には想像もしなかった選択がある

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恒夫さんは前妻が引き取ってすでに成人している娘と息子とも親しく交流していて、誕生日や父の日を祝ってもらっているらしい。愛される人柄の男性なのだろう。

「私はまだ彼の子どもたちに会っていませんが、夫が自分の子どもたちと仲良くするのは当たり前だと思っています。私も息子たちと3人で食事することがあるのでお互いさまです。息子たちと出かけるとき、夫は『お金はあるの? 大丈夫?』と声をかけてくれます」

千里さんは10年ほど勤務したメーカーを辞めて、家事と義母の介護をしながら、自宅でもできる仕事を始めたばかり。家計は恒夫さんが支えている。ただし、千里さんの息子たちにかかるお金だけは恒夫さんに頼っていない。

「夫は出してくれるというけれど、私が嫌なんです。次男はまだ専門学校生なので、学費などは前の夫と私が出しています。長男はすでに社会人なので、彼らが住んでいるマンションの家賃を半分払わせています。家事もほとんど長男がやっているようです」

「いま、とても幸せです」

母親が再婚したことで、息子たちも自立できたのだろう。千里さんによれば、恒夫さんにもよい変化が生じた。

「離婚して7年間は、一人きりで自分の思うように生きてきた人です。結婚当初はとてもワガママでした。でも、最近は私の意見も聞いてくれています。お互いバツイチで、今度は失敗したくありません。日々、学んでいます」

それでも細かいケンカはある。外食好きの恒夫さんは、自分が連れて行った飲食店で千里さんが「おいしい」と言わないと拗ねてしまったりする。千里さんはそんな「しょうもない」ケンカも含めて、現在の生活のすべてをありがたいと思っている。

「義母は平日は毎日デイサービスに行ってくれています。だから、悩みはありません。いま、とても幸せです」

他人と比較しても幸福にはなりにくいが、過去の自分と比べることによって現状のよさを実感できることはある。好きな人と支え合って生活する――。このささやかな幸せを「ありがたい」と深く感謝できるならば、失敗や苦労にも意味はあると思えてくる。

大宮 冬洋 ライター

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おおみや とうよう / Toyo Omiya

1976年埼玉県生まれ。一橋大学法学部卒業後、ファーストリテイリングに入社するがわずか1年で退社。編集プロダクション勤務を経て、2002年よりフリーライター。著書に『30代未婚男』(共著、NHK出版)、『バブルの遺言』(廣済堂出版)、『あした会社がなくなっても生きていく12の知恵』『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました。』(ともに、ぱる出版)、『人は死ぬまで結婚できる 晩婚時代の幸せのつかみ方』 (講談社+α新書)など。

読者の方々との交流イベント「スナック大宮」を東京や愛知で毎月開催。http://omiyatoyo.com/

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