森田芳光・映画監督--映画の出来を決めるのは原作よりもチーム力だ
映画監督・森田芳光は同じ場所に安住しない。33歳で『家族ゲーム』という映画史に残る傑作を世に送り出し、『模倣犯』や『黒い家』ではベストセラー原作を大胆に脚色して賛否両論を巻き起こした。逆に黒澤明監督の傑作時代劇のリメーク『椿三十郎』は、オリジナル脚本をそのまま使用して話題に。そして13年ぶりのオリジナル作品となる最新作『わたし出すわ』(10月31日公開)では、おカネの使い方という、極めて今日的なテーマに切り込む。発想の原点を森田監督に聞いた。
--森田監督はつねにさまざまなジャンルの映画にチャレンジされていますが、どのように企画を考えるのですか?
企画ではなく、僕が意識しているのは後輩の存在。たとえば、『椿三十郎』にしても、黒澤(明)さんがやったときと、現代の僕がやったのとでは絶対に違うニュアンスがあるはず。それを後輩に提供したかった。『失楽園』にしても、今まで作られてきた渡辺淳一さん原作の映画とは違うスタンスの映画を作れる自信があった。だから、いつも違う映画を作っているのは、後輩たちにとって映画の作り方の広がりにつながるから。そう思いながら、自分はやっているつもりです。
--森田監督の映画の内容は原作と大きく違うことも多いですが、原作に左右されることなく、監督の主観で作っているのですか?
いや、左右されていますよ。特に原作の読後感を重視します。演出や編集の面で今までとは違うものを作ってみようということです。
--『それから』は文芸映画ですが、演出の手法が昔の文芸映画と全然違います。
意識して変えました。そのほうが将来若い人が作るとき役に立つじゃないですか。後輩に対して伝えたいことがたくさんあるんです。
--いい映画を作るためにいちばん必要なことは何でしょうか。
ミスキャストをしないということ。出ている人がみんなイキている。こういう人がいたら面白いとか、こういう人見たことないとか、観客にそう思わせるキャスティングが重要です。