京都市民が嘆く「舞妓パパラッチ」の悪行三昧 観光客は舞妓にとって「危険な存在」でもある

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四条河原町の交差点を渡って鴨川を目指す。そうすると次第に歩道の幅は狭くなり、すり抜けも追い抜きも困難になる。なすすべもなく、ただ人波に流されるまま東へと運ばれていく。

京都を代表する近代建築であり、森見登美彦の『夜は短し歩けよ乙女』で全国の文化系男女に広く知られるところとなる東華菜館の美麗きわまる玄関の前を素通りすると、四条大橋にさしかかる。

夏に先斗町(ぽんとちょう)のお店が出す川床と河川敷に等間隔で座るカップルが名物である鴨川にかかる橋である。「ああ、川面を走る風が気持ちいい」などと思いながらも、鴨川をバックに肩を寄せ合う観光客の自撮り棒をわれながら慣れた身のこなしで避けつつ対岸を目指す。

このまま川端通を越えると歩道に地元住民らしき人の姿はぐっと少なくなり、歩道沿いの商店もお土産物屋や観光客向けの飲食店がほとんどになる。「観光客が多くておっくうな」四条通もこの辺りまで来ると、「観光客が多い」どころではなく、ほぼ「観光客の道」となる。

舞妓さんに伸びる「怪しげな手」

そして京都を代表する花街として有名な祇園に差し掛かると、時代劇でよく見かける高札のような看板が目に入る。歩き煙草禁止やゴミ捨ての注意などが示されており、外国人観光客に対してマナー周知のための「御触書」ということなのだろうとわかる。そしてとくに印象的なのが舞妓さんに伸びる怪しげな手である。

マナー啓発を呼びかける「高札」(写真:『パンクする京都 オーバーツーリズムと戦う観光都市』より)

この辺りは、舞妓さんや芸妓さんが座敷を行き来するお茶屋さん、そして彼女たちが寝起きする屋形がある地区であり、この花見小路はいわゆる京都五花街といわれるうち最大の花街である祇園甲部のメインストリートである。とくに景観の整備された南側を中心にここ数年は多くの観光客でにぎわう通りだ。

しかし、聞くところによると観光客による舞妓さんへの迷惑行為が問題化しているという。

この界隈に外国人観光客が押し寄せるようになったのは5年ほど前、2014年前後からとのこと。その頃から単なる人の多さのせいだけにはできないトラブルが数多く起きているようだ。

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