第3回 海外フェア事情

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日本でも書店のフェアは選り取りみどり。料理書フェアといった定番に、著者サイン会、トークに握手も。撮影会も華やかだ。しかしいろいろな意味で枠外の外国では、何をするにもお国柄が出る。そんな日常で耳目にすることをいくつかお届けしたい。

まずは日本にはない価格操作。おすすめ商品は値引シールで10%に20%値引、これは常套手段。各種広告などにはクーポンを入れ込み、持参の方はお買上げ1回につき特別割引。これも定番。
 そしてメンバーカード。年会費をいただくけれど、カード提示で定率値引。単なる値引カードに終始せぬよう、イベント情報の連絡や各種特典も工夫中である。

フロアのイベントも積極的に。例えば児童書の読み聞かせをスタッフのボランティアで行う。アルバイトの女性がいとも簡単にこなすのを見ると、緊張や人見知りとは無縁のオーストラリア人を心底尊敬する。
 目を引くところではフェイス・ペインティング。顔に特殊絵の具でデコレーションするのだ。
本屋なのでデザインはキャラクターものが中心だけれど、子供にとっては目立てば勝ち。これは見ていて楽しいイベントだ。

そしてコスプレ。スタッフもお客様も全員でコスプレ。小さい頃からハロウィンやらなんだかで仮装は慣れていると見え、みんな手馴れたものである。お客様は休日の趣味だけれど、スタッフは当然業務の範囲内。そのままバスに乗って通勤してくるツワモノ揃いだ。

店頭で提供する品々も個性的。日本ではブックカバーにしおりが常套手段。当地でもトートバッグ等は出版社協力でよく配る。
 しかし開店記念日を誕生日と銘打っての、ケーキの配布はわが目を疑ったイベントの一つだ。
 本屋でケーキというのが新鮮な上に、お客様がその場でかぶりついているのも衝撃的。
 ちなみに夕方以降のイベントは、ワインを振舞うのが常識とのことだ。日没後の集いにはワイン。しかも赤がいいらしい!

イースターは学校の休みと重なることもあり、生ヒヨコがゲストに来店。正確に言うと孵化前の卵が届けられ、孵化してヒヨコになると言う数日掛りのイベントなのだ。
 宅配業者に「チキン1ダースお届けです!」と言われ、ランチ用にフライドチキンの出前?と思ってしまう始末。牧畜国家オーストラリアならでは、生き物が身近な存在である。

当地においてはアメリカの本でもイギリスの本でも、同じ英語なので困らない。そして為替の影響でネットで購入できる海外輸入書籍は、地元書店の半額以下。
またキンドルなど電子書籍端末はスーパーでも販売中。わざわざ本屋に来ていただくには、そして本を購入していただくには、本をキーワードとしたさまざまな体験を付加価値として提供しないといけない。
 形の違いこそあれ、読書を愛する人たちにご愛顧いただいている点において、本屋に国境はない。

●追記

これは「ウォーリーを探せ!の日」のスナップショット。オシャレと真逆に位置するような赤白の縞シャツをなぜ皆持っているのか?!
 普段着で着ているのか、しょっちゅう仮装しているのか…… オージーのファッションセンスは理解できない。

山田 拓也 紀伊國屋書店シドニー店 支配人

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やまだ たくや / Yamada Takuya

紀伊國屋書店入社以来、シンガポール、ドバイ、シドニーで、英語、中国語、仏語、独語そしてアラビア語書籍の販売に携わり、インド、ウズベキスタン、エジプト、エチオピア、ケニア、シンガポール、ジンバブエ、スリランカ、タイ、中国、チュニジア、ドイツ、トルコ、ネパール、パキスタン、バングラディシュ、フィリピン、香港、マレーシア、ミャンマー、モロッコ、オーストラリア人等と働く。多様な価値観との接触が趣味の書店員

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