「ブラック社則」への困惑を哲学で考える方策 ルールに対してどう生きるか学ぶ4ステップ

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そんな決まり、入社時には言わなかったじゃないか、とゴロウはムッとしたが、その場では平静を装い、聞き流すことにした。しかし、それから毎日髪型のことを注意され、「俺が切ってやる」とまで言われるようになった。仕事に集中できないだけでなく、出社することさえ気が重くなり始めた。大人になったというのに、こんな他愛もないことで嫌な思いをすることになるとは……。他人に髪型を強制するような社則には、断固反対せねば!

思考するための4ステップ

これを読んで、どう思っただろうか。営業部の一員であるゴロウは、課長の命令に従うべきだろうか。それとも、髪型のような個人的な事柄に、上司は介入すべきでないと考えたほうがいいのだろうか。

この社則はアリか、ナシか。あなたがどちらの立場を選ぶにせよ、重要なのは、その立場を支持する理屈を通すことである。意見がぶつかったとき、互いの根拠を突き合わせることから議論は始まる。感情的になっては答えなど出ない。

では、この問いをどのように考えていけばいいか。ここでは、拙著『哲学の世界へようこそ。答えのない時代を生きるための思考法』で提案した「考え抜くための4ステップ」に沿って考えてみよう。

ステップ1 直感をもとに立場を決める
→「あなたがその立場を選んだ根拠は?」
ステップ2 根拠に説得力を持たせる
→「その根拠はどれだけ妥当か?」
ステップ3 別の観点から問い直す
→「より納得のいく根拠はないか?」
ステップ4 使える結論を導き出す
→「感情ではなく理性に基づいた結論か?」

出発点は、あなたが抱く素朴な直感である。これは違和感と言ってもいい。まずは直感をもとに賛成か反対かの立場を決めよう。例えば、どれだけ周囲が「そんな決まりはおかしい」と述べたとしても、自分が「おかしい」と思わないのなら、あえてその問題を考える必要はない。しかし、反対の立場はもちろん、賛成の立場を取るとしても、「なんでそれを正しいと思うの?」と問われたときには応答する必要がある。どちらの立場にせよ、理屈を通せることが重要なのだ。

立場を決めたら、いったんその理由も口にしてみよう。ゴロウの例でいえば、「髪型は個人の自由の問題だから、会社が口出しするのはおかしい」「この髪型は学生時代から守ってきた自分の個性だから、変えるわけにはいかない」といった具合に。

ただし、この時点では、こうした言葉は単なる「不平不満」として片付けられてしまいやすい。だからこそ次のステップ、根拠に説得力を持たせるのだ。ここでは歴史的に考えてみたり、論点となる概念について検証を加えたりしてみよう。

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