「ブラック社則」への困惑を哲学で考える方策 ルールに対してどう生きるか学ぶ4ステップ
髪型の強制はパワハラか?――「社則」を考える
中学や高校のとき、髪型や制服について事細かな規定があって、少しでも違反すると厳しく注意されたという経験が、皆さんにもあるかもしれない。例えば、前髪が5ミリ長かっただけで、親まで呼び出され、延々と説教されるとか。そのたびに「早く大人になりたい」と思った人もいることだろう。
近年、「ブラック校則」の問題が取り上げられるようになったが、最近は「ブラック社則」というものもあるらしい。企業には「社則」と呼ばれる独自の決まりがあるが、中には服装や身なりに干渉してくるところがある。あるところでは女子社員に眼鏡の着用を禁止したり、あるところではハイヒールを履くよう強制したりするという。
大人になれば、自分のことは何でも自分で決めることができると思っていたのに、これでは中学・高校時代と同じではないか……。そう感じても無理はない。
本稿で考えるのは「社則」についてである。しかし、「社則」の是非について議論することはしない。むしろ「個人の服装や身なりに対して企業が強制介入してきたとき、その人はどう振る舞えばいいのか」という具体的な問題を考えていく。そのために、金融関係の企業に就職したゴロウという架空の若者に登場してもらおう。
ゴロウは学生時代からファッションに対する関心が高く、自分のスタイルにこだわりを持っていた。髪は長めで、おでこと片目が少し隠れるくらいに前髪を下ろしていた。
その後、ゴロウは今の会社に入社。研修も終わり、営業部に配属されたのだが、ちょうどその日、課長から呼び出されたのである。なんと、こだわりの髪型を注意されたのだ。ゴロウは入社後も大学時代と同じ髪型だったのである。課長は言う。
「子どもっぽい髪型はやめておでこをちゃんと見せなさい!うちの営業部員はみんな、七三分けか、清潔感のある短髪か、どちらかと決まっているんだ。今日配った社則にも書いてあるから熟読するように。今の髪型じゃ、まるでホストかゲゲゲの鬼太郎だぞ!」
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