インドのドタキャンに翻弄される安倍外交

巨大経済圏構想「RCEP」が頓挫した深刻な内情

単に巨大な経済圏をつくるだけではなく、電子商取引や知的財産についても、TPP(環太平洋経済連携協定)に匹敵する厳格なルールを導入するという高い理想も示してきた。

2018年7月に日本で開かれたRCEP閣僚会合でのスピーチは、安倍首相の思い入れをよく示している。

「電子商取引の自由なルールをつくり上げる。そうすることで、ヤンゴンの街中で観光客を相手にココナッツオイルを売ってきた小さな企業にも、インターネットを通じて35億人のマーケットという大きなチャンスが生まれる。知的財産をしっかりと保護するルールを整備する。そうすることで、オーストラリアで開発された最先端の血液検査キットを誰もが使えるようになる」

RCEP最大の障害はインドの抵抗

とはいえ、RCEPに参加する16カ国の発展水準はばらばらだ。1人当たり名目GDPでみれば、トップのシンガポール(6万4041ドル)と最下位のミャンマー(1298ドル、いずれも2018年)とは50倍の開きがある。それだけに交渉は難航を極めた。

とくに最大の障害だったのが、1人当たりGDPで16カ国中、下から3番目であるインドの抵抗だ。長らく輸入代替政策をとってきた国だけに、市場開放への意欲は高くない。それをなんとかつなぎとめてきたのが日本である。

TPP並みの自由化を求める日本に対し、消極的な姿勢を示してきたのは中国も同じ。ところが、米中摩擦の激化によって中国はRCEPに活路を求め、交渉に積極的になった。こうなると、インドの存在が合意の障害として際立ってしまう。

「自分たちこそRCEPの主人公」という自負が強いASEAN諸国にはインドに対するフラストレーションがたまっており、今年6月にはマレーシアのマハティール首相が「当面は(ASEANと日中韓の)13カ国で合意すればいい」と、インド外しを求めた。中国もインドを除外した交渉を何度か呼びかけてきたが、日本がインドをかばってきた。

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