マンション市場は値下げ継続で底打ちでも、本格回復は11年以降か《特集・不動産/建設》
野村不動産の「プラウド新宿御苑エンパイア」がそれだ。総戸数93戸のうち、地元地権者分を除く35戸が即日完売した。平均価格1・3億円だが、隣接する新宿御苑を一望できる眺望に希少性を感じる購入者が集まった。また、機能性や利便性を兼ね備えた物件も堅調だ。たとえば、三井不動産レジデンシャルが武蔵小杉駅前に開発した2棟のタワーマンションは「現在、ほぼ完売」(広報担当者)。理由は「駅前の利便性に加えて、商業施設やスポーツクラブ、認可保育園の併設など共用部分の充実度が評価された」(同)と言う。
物件が売れることと利益が出ることは別物
しかし、大手デベロッパーとはいえ、希少性のある物件ばかり開発できるわけではない。
今年は年明けからの大幅値下げでモデルルームへの来場者が急増、アウトレット業者の暗躍も話題になった。が、現在こうした動きは影を潜めている。なぜかと言うと、大手も通常商品を一斉に購買層のニーズに合う水準に値下げしているからだ。そのため売れ行きのほうは比較的堅調だ。これは「用地代や建築費を上乗せする以前、つまり04年頃の価格に戻せば確実に売れる」(久光龍彦トータルブレイン社長)という見方を裏付ける。
しかし、多くは原価面で依然、土地代や建築費が高い物件が多く、採算は厳しい。そのため商品開発にも苦心せざるをえない。
たとえば、都心のタワーマンションを得意とする住友不動産だが、先頃、江戸川区最大規模の「アクラス」(総戸数567戸)の販売を開始した。平井駅から徒歩15分という立地のため、住民専用の無料シャトルバスを運行するだけでなく、共用部分を極力廃したほか、駐車場も機械式に比べてメンテナンス費用がほとんどかからない自走式・平置式にするなどして「周辺より安い価格帯を目指した」(広報担当者)と言う。