人類は資本主義を本当にこのまま続けられるか 斎藤幸平と水野和夫が次の社会を構想する

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斎藤:資本を社会化するイメージですね。私もその方向がいいと思っています。

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『未来への大分岐』で議論したマイケル・ハートも同様に、資本の社会化の重要性を強く訴えていました。ギリシャ元財務相で経済学者のヤニス・バルファキスも、ベーシック・インカムではなく、ユニバーサル・ベーシック配当というアイデアを提出しています。これは、あらゆる企業の株式の一部を社会化し、配当を国民全員に分配するというものです。つまり市民、国民すべてを株主とみなすわけですね。

ベーシック・インカムも1つの手ですが、私は、彼のアイデアのほうに魅力を感じています。これからますますオートメーション化が進んで、機械が勝手にモノをつくったり、サービスをしたりするようになるわけですよね。

機械が勝手に生み出したモノやサービスを、「これはオレの物だ」と独占するのは、よくよく考えると非合理なわけです。そのモノ・サービスを生み出すための機械や情報は、大勢の人の知識や情報が関わっている。だったら、生み出されたモノやサービスを社会化して、共有の財産としてみんなでシェアしようと。

地域性に密着させた社会へ移行

水野:できればそこに、地域性を強く入れたいというのが私の考えです。日本でいえば、現在は明らかに東京一極集中になっていますから、地方分権を進めて、できるだけ地域に密着した教育機関や企業、金融機関を充実させていくべきでしょう。

大きな企業は会社分割して、地域ごとに分社化する。地域のなかでなるべく自給自足できるような形で、現物のベーシック配当をすれば、「より遠く、より速く、より合理的に」という近代システムを脱して、「より近く、よりゆっくり、より寛容に」生きる社会に移行することができますから。

斎藤 はい。そのようなポスト資本主義の構想が、<大分岐の時代>に求められているのです。(後編に続く)

(構成:斎藤哲也)

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