人類は資本主義を本当にこのまま続けられるか 斎藤幸平と水野和夫が次の社会を構想する
水野:このまま化石燃料を使い続けていけば、地球規模の危機に陥ってしまいます。できるだけ早期に、再生可能エネルギーに転換しなければなりません。
そのためには、できるだけエネルギーを使わないシステムにすることが必要です。だからこそ、世界レベルでも、国家のレベルでも、できるだけ「閉じた経済圏」をつくって、ヒト・モノ・カネがあまり動かないようにする必要があります。
斎藤:気候変動やエネルギー問題は本当に深刻です。パリ協定では、今世紀中に産業革命時から2℃未満の気温上昇に抑えることを目標にしています。しかし最近では、実際には2℃ではかなり危険であり、1.5℃がギリギリだとも言われるようになっている。現在はだいたい1℃くらい高くなってこれだけの変化が日常にも起きるようになっているのですから、納得もいきます。
ところが、1.5℃で抑えるためには、2030年まで温室効果ガスの排出量を半減させ、2050年までには実質ゼロにしなければいけないと言われています。この数字を考えると、もう脱化石燃料への大転換は待ったなしなんです。
それにもかかわらず現実には、小手先にもならないようなことばかりをしてお茶を濁し続けています。SDGs商品を買えば、サステイナブルな環境を維持できますよとか、ホテルでタオルを毎日変えないようにしようとか。そういう欺瞞に満ちた「グリーン資本主義」では、まったく問題解決になりません。
私も水野さんが提唱する定常型社会に長期的にはシフトすることが必要になってくると思っています。ただ、定常というビジョンをどうすれば受け入れてもらえるでしょうか。
なぜ定常社会は受け入れがたいのか
水野:真っ先に思い浮かぶのは、政治が動いて再生可能エネルギー100%社会の旗を振ることですが、進みませんねえ。
斎藤:ええ。現在のように、経済成長至上主義の政治や既得権益層にとっては、ドラスティックな手を打たず、いまのまま資本主義を続けていったほうが利益を得ることができるわけですから。
マルクスの有名な言葉に「大洪水よ、我が亡き後に来たれ」というものがあります。つまり自分たちは逃げ切ることさえできれば、後はどうなろうが知ったこっちゃないと。