ニコン、カメラの「赤字転落」危機で迎える難路 新ジャンル「工作機械」進出に不安の声も

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ニコンとしてもカメラ事業の厳しさは十分理解している。5月に発表した中期経営計画では、カメラ事業が縮小することを前提に、新たな成長領域として工作機械を手がけることを発表した。

しかし、この発表にも市場関係者からは疑問の声が相次いでいる。ニコンはこれまで、X線検査装置や測定機などの産業機器を製造していたが、工作機械に対するノウハウが不足していると考えられたからだ。

工作機械の実力は未知数

工作機械の開発にあたっては、これまで培ってきた光学技術を活用するというのみで、詳細ははっきりしない。現在公表されているのは、金属の接合や造形に使われる、レーザー加工機類似の「光加工機」だ。試用向けの受注やデモ要望など引き合いは増えていると説明するが、ニコンの馬立稔和社長は「販売予定と数値はまだ話せない」とし、実力は未知数だ。

一方で、7日の決算発表ではサプライズもあった。工作機械大手のDMG森精機と包括的業務提携を行うことで合意したのだ。ニコン側は計測技術などを提供し、両社で製品開発を行うとともに、DMG森精機の販売網を活用してニコンの光加工機を展開するという。

DMG森精機と組むことで、「工作機械の市場に入るために顧客に接するパイプやニーズを知り、効率よく出ていく」(馬立社長)ことが可能になり、工作機械の販売が加速すると期待している。

ニコンの狙い通りに、カメラ事業の縮小を新領域の工作機械で補えるか。名門ニコンは岐路に立っている。

劉 彦甫 東洋経済 記者

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りゅう いぇんふ / Yenfu LIU

解説部記者。台湾・中台関係を中心に国際政治やマクロ経済が専門。台湾台北市生まれの客家系。長崎県立佐世保南高校、早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了、修士(ジャーナリズム)。日本の台湾認識・言説の研究者でもある。日本台湾教育支援研究者ネットワーク(SNET台湾)特別研究員。ピアノや旅行、アニメが好き。

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