思えばほんの少し前まで、中国やロシアのような国家資本主義体制の国が好調で、西側の民主主義陣営は旗色が悪かった。21世紀最初の10年で、いわゆるBRICsの一人当たりGDPは3倍から6倍程度に増加した。お蔭で中国共産党の御用学者さんたちが、「さても民主主義は不便のよう。ワシらの方が賢明な政策運営ができるぞよ」と憐れむようなところがあった。
G20は、イエレンFRB議長の「対応力」に注目
ところが今年になったら、新興国経済がいろいろ危なっかしい感じになっている。アメリカが量的緩和政策の縮小を始めたところ、途端に新興国通貨が売られるようになった。ついでに安全通貨と見なされている円が買われるのは痛しかゆしだが、ともあれ今年は先進国経済が久しぶりに世界の主役に戻ってくる年となりそうだ。
思えば今日に至る新興国経済の活況とは、先進国マネーが大挙して新興国に流入したことが発端である。特にリーマンショック後のアメリカの量的緩和政策が、世界経済に潤沢なマネーを供給したことは否めない。それが昨年12月以降の「テーパリング」により、マネーが逆流を開始したとなれば、新興国経済が慌ただしいことになるのは必定だ。さしずめ今週末のG20では、アメリカの金融政策に対する新興国の怨嗟の声が飛び交うことだろう。ここはイエレン新議長の対応が見ものである。
さて、かなり前から新興国ブームに警鐘を鳴らしていたのは、モルガン・スタンレー社で15年以上にわたり、新興国関連ファンドを担当してきたルチル・シャルマ氏である。2012年春に刊行した”Breakout Nations”(邦訳は『ブレイクアウト・ネーションズ』/早川書房)は、約10年間続いたBRICsブームの終焉を告げる画期的な内容である。
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