100gで1万円!高級茶葉農園の並外れた情熱

繊細な「茶葉づくり」の常識を破り続けた

茶園でその年に最初に摘まれた茶葉は「一番茶」「新茶」と呼ばれ、香り高く品質もよいとされる。徹底して質の高さにこだわる東頭は、一番茶しか使わない。

一番茶を収穫した後には、地面から20~30㎝ぐらいの高さまで木を切ってしまう。それからまた1年かけて、木を育てるのだ。だからこそ希少で、値が張るのである。

丁寧に手摘みされた茶葉は、その日のうちに近くの工場に持ち込まれる。日本茶は、収穫してからすぐ新鮮な状態で生葉を蒸す。茶葉に含まれる酸化酵素を失活化させるためだ。普通は十分に時間をかけて蒸す。ところが、

「うちの工場では、生葉に余分な蒸気をかけることで葉の成分が抜け、香りが飛んでしまうと考えています。だから、必要最低限、なるべく短時間で蒸して香りや味を閉じ込める製法をとっています」(勝美)

実は、東頭の茶の樹は前述した「やぶきた」。75%を占める品種でありながら、常識を覆すチャレンジの末に、100g1万円の「東頭」が生まれたのだ。

低迷する日本茶市場のなかで気を吐く

実は先述した2004年をピークに、日本茶の消費量は減っており、2017年には8万1328トンになった。価格も落ちていて、最も価格が高い一番茶は2006年には2626円(1㎏当たり)だったものが、2014年には2201円。

ほかの農業と同じく、日本茶の農家も高齢化によって廃業や耕作放棄地が増えていることもあり、日本茶の栽培面積は2004年の4万9100ヘクタールから2018年には4万1500ヘクタールまで落ち込んだ。

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この苦境のなかで、100g1万円、日本一の高級茶である「東頭」は毎年6月の発売から数カ月で売り切れるほどの人気を誇っている。東頭の生葉の収穫量は約500㎏で、これを売り物の茶葉にする過程で5分の1ほどの容量になる。

2018年6月1日、原料茶メーカー「葉桐」は107㎏の茶葉を100gずつ分けて、1070個の東頭を売りに出した。これが7カ月後の翌年1月には完売。この引き合いの強さは今に始まったことではなく、毎年、同じようなペースで売れているという。

コーヒー業界では、2000年ごろ、大量生産された安価な豆ではなく、1つの農園で丁寧に育てられた質の高い単一品種の豆「シングルオリジン」を求める中小のコーヒーショップが続々と現れ、生産者からその質に見合った対価で仕入れるようになった。

それが「サードウェーブ」と呼ばれる大きなうねりとなり、今や日本全国でシングルオリジンのコーヒーが楽しめるようになった。

同じように、日本茶にも低迷する市場を活性化するような変化の波は訪れるのだろうか。

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