100gで1万円!高級茶葉農園の並外れた情熱

繊細な「茶葉づくり」の常識を破り続けた

このシステムは、お茶の消費量が右肩上がりだった時代に最適化された。全国茶生産団体連合会などの資料によれば、日本茶(緑茶)の消費量はペットボトルの緑茶の需要もあって昭和の時代から伸びており、2004年には11万6823トンを記録している。

その流れに逆らうように、少量生産で高品質のお茶をつくり続けてきたのが、築地郁美さん、勝美さんの親子だった。築地親子の茶葉は、ほかとブレンドされることなく、独自のブランドで売りに出されていた。近年、1つの農園で作られた単一品種の茶葉を「シングルオリジン」と言い表す流れがあるが、築地親子はまさにそのはしりだったのだ。

しかし、東頭のために山を開墾するのは苦難の道のりだった。まだ現役で東頭の茶摘みをしている郁美さんの妻、若子さんは、こう振り返る。

「最初は苦労したよ。モノラック(機材や人間を運ぶモノレール。山間地で利用される)ができる前は、荷物を全部背負って山に登っていたからね」

1983年ごろから、勝美さんを筆頭に築地家総動員で山を切り拓いたが、整地が終わるまでに2、3年かかったという。葉桐社長の記憶によれば、最初に出荷された東頭の茶葉はわずか4㎏。しかし、その香りはほかに類を見ないほどシャープで、「忘れられない味だった」という。

手摘みは当たり前、徹底して「質」を追求

東頭でお茶づくりを始めてからしばらくして郁美さんが亡くなり、跡を継いだ勝美さんは「ナンバーワンにして、オンリーワン」を目指して、前例にない取り組みを加速させた。

「伯父はお茶の出来の8割は生葉で決まると言っていました。よい葉を作るためには地力が大切なので、肥料はタネ粕、米糠、魚粕、骨粉などを配合した有機肥料を使います。土壌の微生物に影響するので化学肥料は必要以上に使いません」(佳輝)

養分豊かな土地に根を張る茶樹は、冬の厳しい寒さや霜にも耐え、たくましく育つ。そうして春を迎え、青々と葉を茂らせた5月ごろに茶摘みの時期を迎える。

現代の茶摘みは、機械化されているところがほとんどで、手摘みの10倍以上のスピードを持つ「摘採機」で刈り込んでいく。しかし、東頭はすべて手摘み。しかも、枝の1本1本、葉の1枚1枚を目視で確認しながらの作業になる。

生葉を摘む「お茶摘みさん」たちに、大変ですよね?と声をかけると、何人かが「大変だよ!」と声をそろえた。そのなかの1人が「1枚1枚選びながら葉を摘む畑なんて、ほかにはないよ」と教えてくれた。

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